<#016-3>いい病院知りませんか?
<Q>「いい病院知りませんか」、「推薦する病院はどこですか」等々
<状況と背景>
この種の問いは、私の経験するところでは、質問者がIPのために病院を探しているという例が圧倒的に多いのです。質問者本人が受診するために病院を探しているわけではないのであります。質問者はIPのために病院を探してあげているというわけであります。
<A>
そんなもの知らねえよ。
他所の情報なんか私はなんら持ち合わせていませんので。
<解説>
まったく、こんなくだらない質問に付き合わされてしまう自分がつくづくイヤになる、こういう問い合わせを受けるたびに窓から飛び降りたくなる。
私にはこういう質問にお答えする筋合いもなければ、義理もなく、その義務もない。こんなもの、ラーメン屋さんに美味しいラーメン屋さんを教えてくださいと頼むのと変わらないじゃないかとも思う。かなり失礼な質問という気がしている。
しかしながら、今後、こういう質問を寄こされないために、もうここで私の見解を述べておこうと思う。こういう質問をしたい人は、実際に質問せずに、本項を読んでいただけたらいいです。
既述のように、この問いは質問者がIPのためにしていることであります。
質問者とIPの続柄はさまざまであります。親子であったり、兄弟姉妹であったり、祖父母と孫であったり、従妹とか親戚関係である場合もあります。それぞれに応じて考え方も多少は変わってくるかもしれません。
基本的には、質問者がIPの生活の面倒を見ていて、その義務や責任を負う立場であるのであれば、質問者がIPを病院に連れていくことは適切な行為であると私は考えています。そうでない場合は少々ややこしい問題が発生するかもしれません。ましてや第三者がIPに過度に治療を勧めたり、現実にクリニックに強制連行した場合、それは第三者の越権行為であり、IPの人権に関わると私は考えています。
次に、IPの立場で見てみましょう。もし、IPが本当に精神病であるならば、その人に関わる人は少ない方が望ましい場合があります。
仮に、IP本人が自ら受診すれば、IPにとって、それは医師(そのスタッフも含めて)との関係だけに収まります。
質問者がIPを病院に連れて行ったという場合、IPにとっては、医師と質問者との関係が生まれます。つまり、質問者とIP、医師とIPとの関係が生じ、さらに質問者と医師の関係もIPに圧し掛かることもあるでしょう。
質問者が病院をカウンセラーに教えてもらった場合、質問者を通して、IPとカウンセラーの関係がさらに生まれることになり、全体の関係性は輻輳してくることになります。全体の関係性が複雑になるほど、耐えられなくなるIPもいるだろうと私は思うので、できるだけ関係者が少ない方がいいと思うわけです。ましてや、このカウンセラーはIPにとっては姿の見えない存在であり、場合によっては、IPを恐れさせる存在になってしまうかもしれません。私はそのような存在になってしまうことを拒否したいのであります。
さて、以上の前置きを踏まえて、この質問そのものに入っていきたいと思います。
この種の質問には二つのパターンがあるように私は感じています。
まず、①質問者がそのIPからかなり痛めつけられていたり、困らされているといったパターンがあります。
次に、②質問者はそれほど痛めつけられたりすることはなく、傍観者的な立場を固持しようとされるパターンがあります。
どちらであるかは質問者が詳しい話をしない限り判断できないものであります。質問者の口調や態度から私は判断するのですが、その判断は間違っている可能性も高いと思っています。
もし、質問者が①に属する人である場合、質問者自身がカウンセリングを受ければよい、と私は考えます。IPの病気云々とは別に質問者自身が困難を経験しているからであります。
もし、質問者が②に属する人の場合、質問者がIPの病を促進している可能性が高いと私は考えています。こういう質問ができるということもそうであります。さらに、病気なのはIPであり、IPが治療を受けるべきであり、そのIPのために病院を探しているという質問者の態度がIPにどういう影響を与えているか、ということを考えればすぐにわかることであります、
少し言い換えると、①は質問者がIPに巻き込まれていると言えるのですが、②は質問者がIPを巻き込んでいる可能性が高いというわけであります。事実、この問い合わせは、質問者がカウンセラー(つまり私)を巻き込んでいるのであります。
(文責:寺戸順司-高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー)