<#016-2>「薬の服用を止めたい」
<Q>「薬(の服用)を止めたい」、「もう薬は飲まなくてもいいでしょうか」等々
<状況と背景>
どこかの病院に通っている方なのでしょう。薬を服用してきたのをそろそろ止めたいということを、その病院とはまったく無関係な私に訴えるわけであります。私にそんなことを問われても答えられるはずがないのに、一体、どういうつもりなのだろうかと、この種の問い合わせを受け取るたびに私は疑問に思います。
<A>
こういうことはその薬を処方した医師と相談してください。
<解説>
いくつかこの種の問い合わせを受けた経験が私にはあり、そこには大きく分けて2つのパターンがあるように思います。
一つ目は、質問者の状態が良くなってきて薬がなくてもやっていけそうな気になっている、あとは自分でなんとかできるような気がしているという人たちがいます。
私の個人的な印象ですが、こういう人は薬を止めると、いずれ悪化するか再発するものだと思います。
つまり、自分でどうすることもできなかったから薬を服用しなければならない状態に陥ったはずであり、その同じ人が、今度は薬なしで自分でどうにかできると言いだしているわけであります。どこまでその言葉が信用できるか疑問であります。
もし、自分でやっていけるというのであれば、それ相当の根拠を提示できないと無理でしょう。大抵の場合、その根拠は当人の主観的感情体験によるものだと私は考えています。つまり、その根拠とは、自力で何とかできそうな「気がする」とか、大丈夫だと「思い込んでいる」とか、良くなっている「感じがする」などであります。私のクライアントあるいはクライアントの周囲の人にもそういう人が多くみられたので、私はそのように考えている次第であります。
もし、その人が本当に薬なしでやっていけそうであるとするなら、次のようなことが見られるであろうと私は考えています。
①まず、医師のほうから薬に関する話が出てくるでしょう。薬の量を減らしてみようかとか、服用の間隔を広げてみようかとか、少し効き目の軽い薬に変えてみましょうかとか、そういう提案が医師の方からなされるだろうと思います。
②その人の人格が以前(というのは病中、病前)よりも大きく変わっていることが確認できること。具体的にはそれは生活上の変化として現れるものであり、その変化がすでに1年以上見られるといったことが確認できるでしょう。1年以上というのは大雑把な目安ですが、その変化が、安定していて、その人に身に着いているという意味であります。
③これは①と関係するのですが、すでに薬の量や頻度を減らして、それでその人が問題なくやっていけているということが十分に観察されている場合であります。
こうした背景があるのであれば、薬の服用を止めたいということを医師と相談しても良いと私は考えています。
2つ目のパターンとして、薬を服用することへの抵抗感が強い場合があります。このパターンは治療の初期段階にある人に見られるように思います。
このパターンはさらに、いくつかの背景があります。
①薬の副作用が大きい場合があります。これに関しては別に述べたいと思います。副作用が大きくて、薬を服用することが負担になっている、だから服用を止めたいといったケースであります。
②医師やその病院に対して、あるいはその治療に対しての抵抗感が強い場合であり、それが薬の服用を巡って顕在化しているという例もあります。特に、当人が治療を望んでいないケース、家族から強制されて治療を受けているといったケースなどで見られるように思います。
③これは端的に言えば「病識の欠如」に基づくものであります。自分はどこも悪くない、病気ではない、だから薬を服用するのはおかしいという理屈であります。薬の服用を強制されていると思い込んでいる例もあります。
その他にもあるかもしれませんが、そうした理由で薬の服用を止めたいと訴えるということであります。
ところで、薬の服用を止める人は勝手に止めることが多いと私は思うのです。いちいちそれに関して第三者の意見など求めたりしないものであると思うのです。
従って、私は次のように考えるのです。こういう質問を寄こす人は、薬を服用することにも不安があり、薬の服用を止めることにも不安があり、それを医師に相談することにも不安があり、それで私のようなカウンセラーに頼ってきても私が大したことをお答えしないのでますます不安が募るだろうと思います。私に問い合わせたことで不安の種が一つ余計に増えたようなものだと思います。
いずれにしても、この人たちは薬を服用することにも止めることにも不安があり、抵抗がある人であり、葛藤を経験しているのだろうと思います。
もう一度繰り返し回答するのですが、薬に関しては私は何も言えません。それは私の専門外のことであり、また、医師とその質問者との間に割り込むようなこともしたくはありません。
そのような不安、抵抗、葛藤は、その薬を処方した医師との間で生じているものであり、その医師との間で解消すべきものであります。私はそこに口を挟む権利を有さないのであります。
最後に、勝手に服薬を止めたりする人もありまして、そういう人は後で症状がぶり返すことが多いように思いますので、自己判断や独断は禁物なのであります。なので、そういう意味でも、私に尋ねるよりも、その医師に相談してください。
(文責:寺戸順司-高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー)