<#11-2>キレる配偶者(2)~「例外」
パートナーがキレるといった問題に関して、まずはその「キレる」人たちを分類し、整理してみようと思います。言うまでもなく、これは私の個人的分類でありまして、すべて私の個人的経験に基づいていおります。
最初に取り上げるのは、「キレる」ともっとも無縁な人たちであります。この人たちは滅多にキレるということがなく、ごく稀に、あるいはごくたまに「キレる」とかそれに類似の状態に陥るという人たちであります。
キレることはこの人たちにとっては例外的なことに属するので、私たちはこの人たちを(A)「例外」パターンないしは「例外」タイプと呼ぼうと思います。
さらに、あまり明確化もできないのですが、(A―1)キレることが滅多にない人たちと(A―2)それほど頻繁でもないけれどたまにキレるという人たちとに分けることもできそうであります。
(A―1)は、それこそ長い夫婦生活の中でパートナーがあれほど激怒したのを初めて見たといったようなケースであります。(A―2)は、そこまで珍しくもないけれど、1,2年に一度くらいキレることがあるといった程度のものであります。
この「例外」パターンでは、キレる本人がカウンセリングを受けに来るのではなく、そのパートナーが来られることが多いのであります。キレられる側の人が来談するのです。
これは理解できないことではなくて、例えば(A-1)のようなパターンでは、これまで見たことのない相手の姿を目の当たりにしてしまうのであります。キレられた側の人にとっては、衝撃がとても大きいのでしょう、パートナーのキレる姿に激しく動揺なさるのであります。この動揺をなんとかしたいという訴えをされることが多いのであります。
(A―2)のパターンでは、キレられる側はそこまで動揺することはなくなっているのですが、たまに生じる相手のそれに少し対処できた方がいいと思いになられて来談されることがあります。つまり、そういうパートナーと上手に付き合えるようになることを求めて来談されるわけであります。
(A―1)と(A―2)とでは、どちらもキレられた側が来談することが多いとしても、その主訴の部分に若干の相違があるように私は感じております。
(A―1)に該当するケースを別に掲載しておきますので、参照していただければと思います。この夫婦では夫がキレたのでありますが、妻曰く、結婚前から現在まで、夫のそういう姿を見たことがなかったそうであります。彼女は非常に動揺し、夫に怯えるようになり、それでカウンセリングを受けに来たのでしたが、夫がキレたのはその一回きりであったようです。ちなみに(ここは後で重要になってくる部分でありますが)、この夫はそこでキレた後、1週間から2週間近く落ち込んだということでした。
(A―2)に該当するケースは特に挙げなかったのですが、基本的に(A―1)のケースと重複するところが多いので割愛する次第であります。
さて、それではキレた側の人たちはどうなのでしょうか。私の経験範囲では、この人たちは夫であることが多いのですが、この夫たちはどういう人たちなのでしょうか。
直接本人に会ったわけでもなく、クライアントである妻たちから間接的に伺う話に基づいているので、確かなことは言えないとは思うのですが、この夫たちは基本的には「キレる」ということのない人たちであります。
幾人かの夫たちは、自分がキレないように自分を律しているという感じの人もおられるように思います。その対処策を身に着けてきたという感じの人もおられました。キレないようにしようと自分を律して、おおむねそれに成功するという人たちであります。
一方、感情を隔離しているような印象を受ける夫たちもおられるのです。この人たちは平常から感情が薄く、過度に理知・理性的な印象を周囲に与えるようであります。良く言えば沈着冷静で、いつなんどきでも感情的になることがないといった感じの人であります。悪く言えば、冷淡で淡泊で、理屈っぽいといった感じの人であるようです。
前者の自分を律しようとしているという感じの人は、概ねそれに成功していると思うのですが、後者の感情を切り離すことで律しているという人は、かなり無理な律し方をしている(当人はそうは思わないでしょうけれど)ようであり、感情を切り離してるので時折感情からしっぺ返しを食うことになるのかもしれません。
従って、(A―1)タイプは前者が、(A―2)タイプは後者が多いのではないかと、あくまでも個人的見解でありますが、私はそのように考えています。
ところで、感情を切り離しているということがどこで分かるのかと言いますと、妻の話から察するわけであります。後者のような感じの人は、つまり感情を切り離すという感じの人は、妻との間(その他の家族の間)でも感情的な交流が乏しいのであります。従って、夫婦(家族)場面のエピソードを聞いていくとそれを思わせる話が出てくるのであります。旅行なんかに行っても一緒に喜んだりができないとか、子供の誕生日を義務的ないしは事務的に祝っているとか、悲しいドラマを見ても涙ぐんだりすることがないとか、家事を手伝ったりしてくれるけれど優しさが感じられないとか、そんな話が出てくるわけであります。
ひと言だけ付け加えておきますと、感情を切り離している感じの人は、感情が掻き立てられるのを非常に恐れていたり困惑したりしていることが多いように思うので、その人の感情を搔き立てない程度の距離感をうまく保って付き合うとよろしいでしょう。
さて、私たちはキレるパートナーについて、整理・分類を試みています。本項ではキレるということが「例外」に属するという人たちを取り上げました。このような人たちを「キレるパートナー」の項目に含めていいかどうか判断に迷ったのでしたが、キレる人を考察する際には、あまりキレることのない人のことも視野に入れた方が良いかと思い、取り上げました。
この(A)「例外」パターンをさらに、(A―1)めったにそれが生じないケースと(A―2)たまにそれが生じるというケースとに分けました。あくまで頻度の違いでしかないので、明確に分類することもできないのでありますが、キレられる側の訴えとキレる側のパーソナリティには両者の間で違いがあるかもしれないとも私は考えています。
ただ一つだけ注意しておきたいのは、この人たちはキレないのではなく、普段からキレないように努力している節が見られるという点であります。キレないようにと自分を律しようとされているところがあるようであります。この観点は後々重要になると思いますので少し記憶にとどめて置いていただきたく思います。
(文責:寺戸順司―高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー)