<#007-5>臨床日誌(5)~注意集中(1)

 

 仕事でも勉強でも、注意を集中することが求められる。もっと注意集中しろと叱られてしまうというクライアントさんもおられる。でも、何をどうしたらいいのかで迷ってしまう人も少なくないようである。そこで、今日は注意集中に関して僕の思うところを綴ろうと思う。

 

 まず、注意集中には3つくらいのパターンがあるということを押さえておこう。

 一つ目は「無意図的(又は自動)集中」と呼ぼう。これは特別な努力もなく対象に注意が集中できるというものだ。

 二つめは「意図的集中」と呼べるもので、かなり意図的に努力して自分を対象に方向づけて集中させるというものだ。

 三つ目は「二次的(または後発的)集中」と呼べるもので、これはやっているうちに集中できるようになるというものだ。

 どの人も上記の3パターンの経験はあると思う。でも、どれかのパターンが優勢であるとか、どれかのパターンに強いといった個人的な傾向がどの人もあるのではないかと思う。そのため、まずは自分がどのパターンをよくするかを知っておくと対策が立てやすくなると思う。

 

 また、どのパターンが優勢であるかということはその人の性格傾向とも関連すると僕は思う。

 例えば、無意図的集中が得意だという人は、いろんなことに興味や関心がある人であるかもしれないし、新しいことに目が向きやすいという人かもしれない。というのは、自分の好きなことや興味関心のあることに対しては、どの人も無意図的集中ができるからである。

 意図的集中が得意であるとか優勢であるとかいう人は自分に厳しい人であるかもしれない。ストイックな人が多いかもしれない。

 二次的集中が優勢であるという人は、のんびり屋であるかもしれない。場合によっては怠け者と評価されてしまうかもしれない。

 

 どのタイプにも一長一短がある。

 無意図的集中は一見すると好ましいように見えるかもしれないけれど、対象に対する興味関心が持続している間しか集中が続かないかもしれないし、新たな何かが現れるとそっちに集中が逸れてしまうかもしれない。目移りしてしまうかもしれない。その場合、無意図的集中から意図的集中に切り替える必要が出てくることもあると思う。

 意図的集中は、意図的に努力して集中することだから、すぐに精神的に疲弊し消耗してしまうかもしれない。これが得意だという人は、対象に対する興味や関心を引き出すことに努めなければならないかもしれない。もっと物事や活動の興味を広げた方がいいかもしれない。

 二次的集中の得意な人は、集中し始めると長くそれに取り組めるかもしれない。ただ、この人はスタートが遅いのが欠点なので、取り掛かりを速やかにするということを意識していなければならないかもしれない。

 

 夏休みの宿題に喩えれば、無意図的集中の得意な子は出された宿題のどれもに興味を持ち、苦も無く取り掛かるだろう。

 意図的集中の得意な子は、義務としてそれに取り組むだろう。毎日、一時間ずつ宿題をするということをするだろう。

 二次的集中の得意な子は、夏休みが終わるギリギリになって取り掛かるだろう。その代わり、取り掛かるとけっこう集中してやるだろう。

 

 ちなみに僕は二次的集中派だ。本を読むことが好きであっても、本を開くことさえ億劫なときもある。それでも一旦読み始めると波に乗ることが多い。始めるまでが長く、始めるとけっこう乗ってくる感じだ。気分が乗らなくても、とにかく本を開こうとか、10分だけ読もうとか、そういう形で取り敢えず開始しなければいけないのだ。まあ、それは僕の場合はということだ。

 このブログとか原稿だって、まったく書く気がしないくせに、書き始めるとあれやこれやと書いてしまうということが多々ある。

 仕事でも趣味でも、なんでもそんな感じである。困ったことである。そして、スタートに時間がかかるくせに、波に乗って身が入りだすと何があっても中断できなかったりする。トイレでさえ我慢してしまうこともある。

 そして、中断してしまうと、再開するのにまた時間がかかってしまうという、本当に困ったパターンである。

 

 しかし、ある程度自分の傾向なりパターンなりを知っていると、それに対しての対策を講じることも可能になってくるものだ。できるできないは別としてもだ。対策を講じることができるのであれば、それは前進したり改善する可能性が生まれるということである。

 さて、この話、さらに続きがあるのだけれど、一度に全部書ききってしまわず、残りは明日に回そう。

 

文責:寺戸順司―高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー)

 

 

 

 

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