<T008-01>ボツ原稿集~「怒り、敵意、そして憎悪、最後に愛」
はじめに
2013年の2月ごろだったろうか、本を出さないかという話が来た。電子書籍だったかもしれない。その辺り、あまりはっきり覚えていない。とにかく本の出版の話が飛び込んできたのだった。
その時、僕には書きたいと思うテーマがあった。それは人間の憎悪に関するものだった。本音を言うと、憎悪に関する本でありながら、本当は愛について語っているという本にしたかった。
出版を持ち掛けてきた会社は僕のこのテーマに難色を示した。彼らは「うつ病」に関する本を出したがっていたのだ。
しばらく、僕と出版会社との間で本のテーマを巡って交渉が続いた。最終的に、最初に「うつ病」の本を出して、その次に憎悪に関する本を出しましょうということに決まった。決まったというより、出版社さんに丸め込まれたという感じがしないこともない。
それで、結局、僕は「うつ病」に関する本に着手することになったのだが、僕はすでに憎悪に関するテーマで着手していたのだった。
僕の悪い癖で、決定してから取り掛かればいいものを、未決の段階で始めてしまうのだ。そうしないと不安になるからである。
まあ、そんなわけで、「うつ病」テーマで書くと決定する以前に作成していた原稿、というか草稿とかメモと呼ぶべきか、はお蔵入りになったわけだ。そのお蔵入りになったボツ原稿をいちいち公開しておこうということである。
こういうボツ原稿というものは、僕の場合、紛失することが多いのだ。パソコンを初期化するときなんかに紛失してしまうのだ。
そうやって失った原稿もたくさんある。でも、失うくらいなら、ボツのまま公開した方がいいと、最近思うようになったのである。
それで憎悪テーマのボツ原稿を公開するわけである。公開するけど、それは順不同である。全体のことも決まっていない状態で部分的に書いていったものなので、前後の脈絡もつながらないと思う。とにかく現存している原稿を手当たり次第に公開することにする。
(寺戸順司―高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー)