8月21日(月):家族のキーパーソン
夕べは眠れず。明け方頃にようやくウトウトしたものの、十分に眠れずに起床。
準備をして職場に。若干の遅刻。
面接の準備をして、一息入れようとコーヒーを入れる。
椅子に座ろうとして尻餅をつく。椅子がそこにあるのは目の隅で捉えていたけど、距離感をつかんでいなかった。椅子の手前で腰を下ろしてしまった。空中に座ったわけだ。
尻餅をつくくらいは何でもないのだけど、変に力が入ったせいか、その後、膝の調子が悪くなる。
いかんいかん、とにかく落ち着かなければ。きちんと物事が見えなくなっている。
なんでこんなにそそっかしくなっているかと言うと、今日のクライアントのためである。ある家族の母親と面接するのだけど、この母親がこの家族のキーパーソンであるように思われるからである。だから昨夜からピリピリしているのだ。
家族のキーパーソンということについて述べておこう。もともとはこの家族の子供がクライアントとして通っておられた。この人が父親と衝突しているのである。この時、子供だけが改善してもなんら問題は起きないと僕は考えている。父親との関係はそのままであったとしても、子供は自分の抱えているものから抜け出すことができる。
しかし、家族関係を変えていくとなると、子供と父親だけを取り上げてはダメなのである。押したり引いたりを続けることになりかねない。あるいは、熱しすぎたので冷やし、今度は冷やしすぎたので熱するといったことを続けかねない。
この関係を中和するのがキーパーソンである。このキーパーソンが動くと、もしくは今までとは違ったように動くと、家族関係が大きく変わる可能性が生まれる。だから重要な存在なのだ。そして、多くの場合、キーパーソンはカウンセリングには訪れないのである。どちらかと言うと、家族の問題において、周辺にいる人物であるからである
キーパーソンは、この家族の場合では母親だけど、祖父母や孫などがそういう役割を担うこともある。とにかく、問題の中心人物ではないけれど、その人が動くことで中心人物たちの関係、家族の全体が変化するように影響するのである。
先週、新規の方で、息子のことで相談に見えられた父親がいる。この家族に関してはキーパーソンがまだ特定できないでいる。父、母、子供それぞれのつながりが今のところ不鮮明であるからだ。
その前には、息子のことで母親が来られたのだ。だけど、娘(息子の姉で長女)が仲介して母親面接が実現したのだった。母親を援助することは可能であるし、母親を通して息子に働きかけることも可能ではある。でも、家族関係が変わるためには、この娘(長女)がキーパーソンになりそうだった。
時に、このキーパーソンは周辺的存在であるだけでなく、影の薄い存在の誰かであることもある。家族と同居している一人の男性クライアントの話には、両親は頻繁に登場するが、弟のことは滅多に語られることがない。この家族に次男がいるということはかなり後になってから知らされたぐらいである。この場合、家族関係を動かすキーパーソンとなるのはこの弟である。
また、キーパーソンは一人とは限らないのである。問題の周辺に身を置いている家族成員はすべてキーパーソンになりえるのである。まあ、その辺りのことは別の機会に述べよう。
家族のキーパーソンについてはいつか詳しく述べることにしよう。
僕にとって問題となるのは、このキーパーソンが動くか否かである。キーパーソンは傍観者的な立場にある。だから「私にも原因はあると思います。でも、彼らが問題を起こしているので、彼らをどうにかしてください」などと言えるわけである。この人がこの傍観者的態度のままで終われば、その家族が変容する機会が一つ失われるわけだ。それがたった一回のカウンセリングで、一時間で決定してしまうのだ。だから僕としてもプレッシャーを覚えるのである。
(寺戸順司―高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー)