7月9日:ビュッフェは懲り懲り

7月9日(火):ビュッフェは懲り懲り

 

 火曜日は定休日だ。今日こそ休む。すでに3回立て続けに休日が潰れてしまった。今日こそは充実した休日を堪能しよう。

 その前に、レンタルDVDを返却しなくては。今日が返却日だ。今回、5枚レンタルしていたけど、ついに1枚は未鑑賞のまま返却することになった。まあ、仕方がない。

 それで朝早くから家を出て、レンタル屋へ足を運ぶ。どうしようかと迷ったけれど、一応、今回も映画を借りておく。鑑賞する時間がなく、そのまま返却ということになっても構わないので、とりあえず、借りておこう。

 レンタルDVD店を後にして、少し足を延ばして近くの百貨店の方へ向かう。道中、コンビニに寄り、タバコを一服。先日から喉をやられているのだけれど、これだけは止められない。それに、百貨店が開くまでの時間待ちもそこでする。

 百貨店に入る。特に欲しいものなんてない。買う予定のものなんて何もない。広い店内をウロウロする。かなり不審人物っぽかったんじゃないかと思う。まあ、いいや。何も悪いことはしていないんだから、堂々としていればいいのだ。

 飲食店コーナーにマクドナルドが入っている。ああ、マクドもいいなあと思う。先日、呑み屋でマクドの話をしたのを思い出す。

 子供の頃、僕が11歳くらいの時だったかな、家の近所にマクドナルドができたのだ。初めて食べた時、世の中にこんな美味しいものがあったのかと、えらく感動したのを覚えている。そもそも、ハンバーガーなんて、それまでの僕の食生活にはなかった存在だ。ピクルス(当時は「キュウリみたいなやつ」などと呼んでいた)も美味しいと思ったし、ポテトがあんなに美味いものだとは初めて知った。そんな話をしたんだった。今どきの若い人はそういう経験をするのかどうかは知らんけど、世の中にこんな美味しいものがあったのかっていう感動は経験する機会が減っているかもしれない。

 それでお昼はマクドにしようかと一瞬思った。ただ、お昼にするには少しばかり時間が早いので、一旦、保留にする。

 その後も、店内をウロウロする。欲しいものが何もない。ふと、この百貨店から少し離れたところにラーメン屋があったことを思い出す。前回、ここに来た時に発見したのだ。そうだ、やっぱりラーメンにしようと思い立ち、結局、何も買わず、何も食べず、百貨店を後にする。

 ラーメン屋はあった。あったのに臨時休業になっている。なんかツイてない。やっぱりマクドに戻ろうかと思った矢先、バスが来た。そのラーメン屋のすぐ近くにバス停があり、ちょうどバスが来たところだった。

 大した考えもなく、僕はバスに乗る。こういう行き当たりばったりの旅もいいなあと思う。そういうのもやってみたい。最初に来たバスに乗って、適当なところで下車して、ほっつき歩いては次のバスに乗るとか、そういうのもいいなあと思う。

 バスの行き先はJR桂川駅だ。僕はその手前の阪急の駅のところで下車する。洛西口駅だ。ここもずいぶん発展しているな。電車の高架下に飲食店なんかが並び始めている。最初は、ああ、こんな感じになったんだなあくらいにしか思わなかったけど、これからどんどん発展しそうな感じである。今後は要チェックのエリアだ。

 そこからイオンモールへ足を運ぶ。ここもよく来た。最初はYさんとだった(Yさんは元気にしてるかな)。以後、足のリハビリにも利用させてもらった。凹凸、傾斜、障害物がないので、いいリハビリコースだった。端から端まで何往復か歩いたものだった。

 2階の飲食店街で何か食べようと決める。3階に行けばマクドもあるのだけど、今日はマクドは止めや。ちょっと奮発してやろうと思う。

 僕が選んだのはビュッフェスタイルのお店だ。以前、一度だけ来たことがある。そこにしよう。何を食べようかといちいち迷わなくて済む。

 さてさて、ビュッフェスタイルのチョイとばかりおシャレな感じだ。どうも僕には不似合いな場所だ。家族連れ、友人同士といったグループが多く、独りなのは僕くらいなものだ。いやいや、そんなことは気にせんでもいい。とにかく、入ったからには食いまくってやろう。そうしてあれこれ食する。

 食べた料理は次の如くである。まず、ご飯、チャーハン、お寿司6貫、パスタ、ピザ、以上、炭水化物グループだ。鶏の唐揚げ3個、ササミのフライ5個、中華の肉団子数個、以上、肉グループだ。その他、切り干し大根、ポテトフライ、麻婆豆腐などである。当然、スイーツやデザートはカットだ。そういうので腹を膨らませたらナンカ勿体ない気持ちになってしまう。

 しかし、まあ、なんだか自分がみすぼらしく思えてきてね。他の人を見ると、トレイに上手に料理を置いていくんだな。少しずつ取っていくわけだ。そうしてトレイの上は彩も豊かになり、バラエティに富んでいる感じがするんだな。トレイの上がすごく上品なんだな。

 それと比べると、僕の方はひどいもんで、トレイに3品くらいがボン、ボン、ボンと乗っかっているだけなんだな。加えて、トレイに余白がほとんど無いというありさまだ。

 そうか、料理はああいうふうに上品に取らなければならないのだなと反省し、挑戦してみる。トレイを取る。一品の料理を少量だけ乗せる。なんか、少ないというか、トレイの上が寂しい感じがするので、もう少しだけ追加する。そして次の料理を少量だけ取る。先に乗せた料理とのバランスが悪いので、同じくらいの分量を追加する。そうすると、先に乗せた方が少なく感じられてきて、後戻りして、最初に乗せた料理を追加する。そうしてどんどん分量が増えていって、結局、3品くらいがボン、ボン、ボンと乗っかる結果になる。

 どうもダメだ。僕がやるとどうしてもお下品な感じになってしまう。どうやら場違いなお店に入ってしまったようだ。ビュッフェはもう懲り懲りといったところだ。

 

 落ち着かない昼食を終えて、一階に降りる。書店に入る。文庫本のコーナーに直行する。

 なんと、ハドリー・チェイスの『悪女イブ』が復刻しているではないか。近く映画化されるらしい。僕はこの作品を読みたいと長年思い続けてきて、昨年になるのかな、古書店で見つけた時は大喜びした。たいへん面白い作品だった。もう少し待てば新刊で普通に買うことができたのだ。

 違う違う、ミステリではない。岩波文庫だ。創元推理、ハヤカワミステリの書架からクルリと振り返ると岩波文庫の書架である。このコントラストはなんだと思いながら、岩波文庫である本を探す。

 実は、探しているのは『女工哀史』である。数週間前から、きちんと読んでおきたいと思い、探していたのである。別に絶版になっているわけでもないので、すぐに見つかる。ああ、1200円もするのか。同じ作者の小説も2冊刊行されている。それも気になる。でも、3冊まとめて買ったら4000円近くになる。ああ、痛い。場違いなビュッフェで1600円も使ったのが悔やまれる。

 幾度となく本を手にしては書架に戻す。買うか買わないかで葛藤する。結局、一冊も買わない。『女工哀史』なら古書店を探すと見つかるだろうし、2冊の小説も来月にしようと決める。いくら岩波がすぐに本を絶版にすると言ったかて、まだ来月なら書店にあるだろう。そうだ来月にしよう。

 こうして昼食を摂っただけでイオンモールを後にする。

 その後、駅に向かう。帰宅方向の電車に乗るか、高槻方向の電車に乗るか、最初に来た電車で決めよう。

 最初に来たのは帰宅方面の電車だった。電車が来たのでホームへ向かう。見事に乗り損ねる。結局、高槻に出て、職場で雑用をして一日を終える。今回レンタルしたDVDも一枚、パソコンで観る。西部劇の『リオ・ブラボー』だ。けっこう良かった。そうだ、映画の話ももっとしたいと思う。

 

 そんなこんなで一日が終わる。あれやこれやと動いているのに、あまり充実した感じがしていない。まあ、いいや。

 

(寺戸順司―高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー)

 

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