7月18日:新ビジネス

7月18日(土):新ビジネス

 

 京都にいわゆる「縁切り神社」がある。僕は行ったことはないんだけれど、何人かの人からそのことを聞いたことがある。

 この縁切り神社に行ってきたという女性がいる。旦那と縁を切りたいらしい。それならさっさと離婚してしまえばいいのにとも思うのだけれど、彼女の方でも離婚に踏み出せない何かがあるのだろう。自分の中に抵抗感があるので外部の力、つまり神仏の力を借りなければいられなくなるのだろう。

 彼女の言うところによると、今日は土曜日ということもあってか、神社にはたくさんの人が参詣にきていたらしい。縁を切りたい人がそんなにおられるわけだ。

 その話を聞いていて、僕はふと考えた。縁切り神社の門前に待ち伏せしておいて、出てきた女性をつかまえては、「新しいご縁はいかがですか?」と売り込むのだ。新ビジネスとして立ち上げようかと思ったくらいだ。

 通常価格3万円のところ、今なら1万円ポッキリだ。女性が1万円払うと、洩れなく僕がついてくるという商売だ。オイシイ商売だ。

 すると、今度は僕との縁を切るためにその女性は縁切り神社に足を運ぶようになる。縁切り神社も儲かるし、縁売り商売も儲かるしで、なんてウインウインの関係なんだ。僕の方はというと、縁を切られたら次の縁を売りに行く。ご縁の押し売りをしていくわけだ。決してお客さんがいなくならないからいい商売である。

 これを僕一人ではなく、10人とか20人とかでやる。幸い、僕の身近には結婚できない男性や女性に縁のない男性がゴマンといる。彼らを雇って縁切り神社前に並ばせる。出てきた女性に「新しいご縁はいかがですか」と売り込む。

 飲み友達で銀行マンの男がいる。彼にこの話をしたらウケてた。事業を立ち上げるから融資を頼むというと、途端に彼は銀行マンの顔になる。利益はどれくらいを見込んでいるのかとか、あれやこれやを訊かれて、最終「却下!」のひと言である。う~む、ジョークの分からん奴だ。

 しかし、まあ、儲からんと他の商売のこと考えちまうな。貧乏だからその発想も貧乏くさいものになってしまうな。それもこれも儲からんのが悪いのだ。本業でもっと儲かるように頑張らんといかんなあ。

 

(寺戸順司―高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー)

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