6月8日(木):キネマ館~『ターミネーター2』
僕はクエンティン・タランティーノ監督作品がなぜウケるのか分からないのと同じように、ジェームズ・キャメロン監督作品がなぜウケるのが分からない。『タイタニック』など、ちっとも良いとは思わなかった。
僕がキャメロン監督作品が苦手なのは、CGが過剰すぎるからだ。確かに、映像は凄いかもしれないけれど、これはもう映画ではない、などと僕は感じてしまう。
本作『ターミネーター2』に関しても、僕の言いたいことはそれに尽きる。映像としては面白いし、作品としても面白い。でも、その面白さはゲームとかアトラクションとかに通じる面白さであって、映画の面白さとは別のものだと僕は捉えている。
これを端的に言えば、人間のドラマや人物のパーソナリティなどが、CGに食われてしまっているということだ。CGの映像ばかりに目を奪われて、あるいはそこばかりが評価されて、人間の存在が背後に退いてしまう感じがするのである。鑑賞後に残るのはCG多用の場面ばかりといった感じなのだ。初代の『ターミネーター』はまだそこまで行かない感じもあったけれど、本作『2』では、完全にその域に達したという印象を僕は受ける。
最初の舞台は未来である。世界戦争後、機械と人間の戦争が続く。人間側の反乱軍のリーダーがジョンである。機械側はこのリーダーを抹殺するために少年時代のジョンが生きる1990年代にT1000型ターミネーターを送り込む。一方、人間側もそれを阻止するためにT800型ターミネーターを90年代に送り込む。90年代の人間にとっては迷惑な話である。
90年代(公開当時の現代)。ジョン少年は養父母の下にて暮らしているが、彼らを親とは思わず、不良化している。今日も銀行ATMから金を盗み取って、不良仲間とバイクを飛ばし、モール内のゲーセンにて遊興に耽る。そんな折、警察官に化けたT1000型ターミネーターに発見され、追われるジョン。そこに、T800型ターミネーターがでくわし、両ターミネーターの最初の戦いが展開する。
まあ、ど派手なアクションだ。ショットガンをぶっ放し、そこらじゅうを壊しまくるケンカをやらかし、最後はバイクと大型トラックのチェイスとなる。
ジョンとT800は、精神科病棟に入院している母親サラを助けに行く。病院内に入る二人だが、T1000も後を追い、病院内で第2ラウンドとなる。なんだか、もう、勝手にやってくれと言いたくなるようなCG合戦だ。
以後、機械戦争の基になるロボット製造会社を襲撃し、ロボット製造技術のすべてを破壊する。ここでも大がかりなドンパチをやらかし、T1000とT800の第3ラウンドが展開する。
車で逃げるジョンたち、ヘリで追うT1000.最後は鉄工場にて第4ラウンドとなる。溶鉱炉にT1000を落とし込んでT800の勝ちとなる。ちなみにT1000型は液体金属で作られているという設定だ。溶鉱炉で溶かしても再生するのではないか、と素朴な疑問を持ったのは僕だけだろうか。いや、液体金属の形状記憶以前の段階に戻るのであれば再生はしないのか。まあ、どうでもいいや。
T800型、つまり旧型のターミネーターに扮するのはお馴染みのシュワちゃんである。アーノルド・シュワルツネッガーさんだ。ドイツ語訛りの混ざった英語が特徴的だ。
母親サラはリンダ・ハミルトンで、本作ではけっこうな名演技を披露しているのだけれど、CGに食われてしまったのはご愁傷様としか言いようがない。
ジョン少年は翳りのある感じがあっていい。T1000の役者さんも無機質で無表情な顔貌が適役。キャスティングがよくできている。ただ、何度も言うようであるが、俳優さんがいくら名演技をしても、CG映像の方にインパクトが持っていかれてしまう。
世間一般の人は本作を面白いと評価しているようであるが、僕は理解できない。何一つ面白いとは感じられない。CGを使いまくった映像、ど派手なアクションと格闘シーンのいくつかだけが強烈に印象に残り、映画を観たという感じがしないのである。莫大な製作費をかけて製作された愚作というのが本作における僕の唯我独断的評価だ。
(寺戸順司―高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー)