6月7日(日):今の生活に戻りたい
今日は用事があって、休業した。本当はこの用事の方を断ろうと思っていたのだけれど、一昨日、予定表を見るまで、僕はこの用事のことをすっかり忘れていたのだ。断るにしても、早めにしておかないと、向こうにも迷惑をかけてしまう。今回は僕の失念に因があるので、仕事の方をなんとか都合をつけて、そちらに行くことにした。取り敢えずは約束だけは果たした。
お昼は「なか卯」で食べる。「なか卯」と言えば、うどんとか丼ものがメインだけれど、僕は「から揚げ」系をお勧めする。サクサク感、カリカリ感がしっかりあって美味しい。高槻にも一軒あったのだけれど、立ち退いてしまったので、それ以来、「なか卯」とは縁が切れたが、相変わらずのカリカリ感が嬉しかった。
しかし、久しぶりに馴染みのない地域に行ってみるのも、たまにはいいものだと再体験した。
夕方、電車の乗り継ぎの関係で、天下茶屋あたりを歩いた。以前何度か歩いたことはあるけれど、少し久しぶりだった。そこの古本屋で、僕が長年探していた本を偶然見つけた。即買いしたね。今日の収穫はそれだけだったかもしれない。
天下茶屋は下町風情があって、僕は好きだ。小さな店が密集していて、商店街なんかでも個性的な店や昔ながらの店が並んでいる。なんか、懐かしい感じがしてしまう。
おばちゃんが一人でやってる小さな喫茶店で、コーヒーを飲みながら、先ほど買った本を紐解く。小一時間ほど経ったところで、その店が閉店になった。まだ外は明るいのに店が閉まるのだ。
もう一度歩く。今度は駅の反対側を歩いてみる。国道まで出ると、多少、開けた感じはある。そうか、この辺りは西成区になるのかと思う。
しばらく歩く。歩きながら思うことは、人生上のちょっとした偶然で、僕がここの住人になっていたかもしれないということだ。そんなことを考えながら歩くと、もし、そうなっていたら僕は今頃どんな生活をしているだろうとか、どんな仕事に就いていただろうとか、この町でどんな生活を送ることになっていただろうかなどと、いろいろ考える。
そうして考えて、疲れてしまうか、結局、今の生活の方がやっぱりいいとか思うようになって、そうなってからそろそろ帰ろうかという気持ちになる。今度は帰るのが待ち遠しいような気持ちになる。早く今の自分の生活に戻りたいと思うようになり、今夜はあれもしなきゃ、これもしないとといった計画が頭の中を忙しく駆け回る。
こうして、僕は一時的な自己放棄から我に返って、これを書いているわけだ。
(寺戸順司―高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー)