6月3日(水):コロナ・ジェノサイド(45)~失敗大国
もうこのシリーズを書くのもウンザリしてきた。書けば書くほど自分が惨めになってくるし、自分が生きているこの世界が惨めに思えてくる。
僕はペシミストである。ペシミストであるが故にオプティミストである。すべてが地獄に見える時、それは天国がないという嘆きであると同時に、天国にもっとも価値を置いていることの証拠となる。天国をもっとも信じているが故にオプティミストであり、オプティミストであるが故に悲惨や不幸がよく見えてしまい、悲嘆せざるを得ないのだ(注1)。
一方、オプティミストはその反対である。彼らはオプティミストであるが故にペシミストなのだ。彼らは悲惨や不幸を過度に恐れているが故に、悲惨や不幸に心を占められてしまうのだ。悲惨や不幸ということが彼らの中では大きな価値を持ってしまうのだ。
まあ、そんな話はどうでもいい、先へ進もう。
(解除も自粛も無意味)
さて、緊急事態宣言も解除となった。解除ありきの決定だった。しかし、早くも第二波の懸念が起きている。当然である。解除されれば人の外出や移動が増え、感染率が高まるのは目に見えている。そうなれば再び緊急事態宣言が出されるかもしれない。
宣言もけっこうだ。自粛も要請されればそれに従う。問題はその期間に何が達成されたのかだ。感染者数の減少は達成ではない。数字はごまかすことができるし、検査数を操作することでいくらでも増減可能である。加えて、自粛すれば感染数が減るのは自明なことであり、なんら努力を要さないことである。
そうではなく、自粛期間中に何がなされたのかだ。僕が思うに、この期間中に仮設の病棟を各都道府県にいくつも建てておく方が良かった。加えて、それぞれの病棟への人員を確保しておく方が良かったのではないかと思う。第二波への備えをしっかりしておくべきだったのだ。一体、そのためにどれだけのことがなされただろうか。
ただ自粛して、ただ解除された、それだけのことのようにしか僕には思えないのだ。
(アベノマスクは国民への侮辱である)
そろそろ僕の周りでもアベノマスクが届いたといった声が聞こえるようになった。僕のところにはまだだけれど、届いている所には届いているようだ。
あのアベノマスクなる代物であるが、あれは国民に対する侮辱以外の何物でもない。あれはマスク不足解消のためではないのだ。国民を黙らせる手段だったのだ。マスク二枚で黙るほど国民は安っぽくはないのだ。しかもとんでもない悪品質のマスクで操作されてたまるかっての。
当初、アベノマスクの予算が200億円だった。蓋を開けて見ると90億円しかかかっていない。しかも品質の悪い不良品を作ったのだ。政府はそれを回収して再検査して、品質を向上させてから配布することにしたが、結果的に460億円ものお金がかかったということだ。このお金は当然税金である。
90億円で不良品を拵えたのなら、それを廃棄処分して、もう200億円出してまともなのを新たに作ったら良かったのだ。290億円の損失は460億円の損失よりまだはるかにましだ。いや、不良品が見つかった時点でアベノマスク政策は廃棄したら良かったのだ、マスクもろとも。
国民1億3000万人に2枚ずつ、つまり2億6000万枚のマスクに460億円か。マスク1枚あたり180円弱といったところか。超高額のマスクだ。
(給付金)
給付金のハガキが届いたといった声も身近から聞こえるようになった。ようやくである。結局、オンライン申請は失敗だったのだ。
僕は一つ計算をしてみた。僕が仕事をしているここ高槻市は人口が30万人ほどである。世帯だとどれくらいになるだろうか。一世帯平均3人だと仮定すれば10万世帯ということになる。
この10万世帯が申請して、それを一週間で処理しなければならないとしよう。当然、土日も返上ということになるので、7日間だ。そうすると、10万÷7は14285である。1日当たりの処理数がそれだけになるということだ。キリのいいところで14000件としておこう。
さて、一日に8時間業務に就くとして、一日に14000件を処理しようと思えば、14000÷8を計算すればいいのだから、1750件だ。一時間に1750件処理しなければならないということだ。
それをさらに60で割ろう。約30となる。一分間に30件の処理をこなさなければならないのだ。そうすると一件の申請につき2秒しかかけられないのだ。言い換えると、一件につき処理時間が2秒以上かかるなら一週間での処理は不可能となる。
これを、処理班の数を10倍にしたところで一件につき20秒になるだけである。申請して20秒で処理できるのかどうかである。
高槻市民は温厚な人が多いので、一週間じゃなくても二週間かかっても待ちますよと言ってくれるかもしれない。そうだとしても、10班編成で取り組んで、一件につき40秒以上はかけられないのだ。
最悪の場合、さらにその倍、4週間でも市民は待つ。それでも40秒が80秒になるだけである。しかも4週間休みなく、8時間途切れなく処理をしての話である。一件の処理に2分かかるなら、それはもう完全にアウトなのである。
政府はスピードを重視すると言うが、スピードを重視するならそういう計算をしなければならない。〆きりから逆算して、一件につきどれだけの時間しかかけられないかをシミュレーションして、実行不可能であればオンライン申請は断念しなければならないのだ。それをしないから次から次へと対応すべき問題が生じるのだ。
もう一つ付け加えておくと、オンライン申請は申請者側のペースに行政が合わせることになる。それも混乱を生み出す。郵送式は行政のペースで実行できるので、その分却って捗るだろうと僕は思う。
(失敗大国)
すべてが失敗である。緊急事態宣言による自粛も、ならびにその解除も。アベノマスクも給付金も。当然、オリンピックも失敗である。感染対策も失敗である。諸外国がどんどん検査をやっているのに、日本だけが検査を制限したのである。無症状者や軽症者が感染を広めると同時に彼らが重症化してしまうのである。
いずれマスクも防護服も足りなくなるのが目に見えているのに、それらを外国に輸出する。そして、国内では雨合羽を改造した即席の防護服を使用しなければならなくなるなどという本末転倒なことが起きる。これもまた失敗である。
補償や医療費、並びにワクチンや薬品の開発・製造費にもっと税金を回さなければならない。確かにそういう金は動く。そこで使途不明の金などが生まれる。どれだけの金がどこにどう動いているのかは不明である。利権を貪っている連中に流れて行ってることだろう。それを検証・追求する野党はあしらわれ、はぐらかされ、おまけに検察は与党とグルときている。もはやこの国は救いようがない。
(注1)ペシミストであるが故にオプティミストという逆説は信じがたいかもしれないけれど、ショーペンハウアーの哲学がなぜ人々を魅了するのかを考えればこの逆説が真であることが理解できる。
(寺戸順司―高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー)