6月18日:事情聴取
以前、ここに書いたように、アルバイトしている店で事件があった。クレジットカードの不正使用があった。その時、僕がたまたま勤務していたというだけで、警察から呼び出されていた。
一時間ほど事情聴取があった。初めての経験だ。しかも、なかなか面白い体験だった。再認識したことは、僕が如何に勤務中に他の事ばかり考えていて、客をきちんと見ていないかということだった。いろいろ質問されて、けっこう覚えていないことや、あやふやになってしまっていることが多いことに気づいた。
一つ面白いと思ったことは、僕はその客をかなりの年配者だと信じていたことだ。実際、僕より年上の人に思われたのだ。その人がその時かなり酔っぱらっていて、足元が覚束ない感じがあって、それが年寄りじみた印象を僕に与えたのだろうか。それとも、僕の疲労感がその人に投影されたのだろうか。
実際に防犯ビデオで確認した限りでは、若くもなく年寄でもないといった人だった。ちょっと年齢がつかみにくい感じの人だった。
それと時間の感覚にもズレがあるなと感じた。もう少し、その人たちとやりとりがあったような気がするのだが、ビデオで確認する限りでは、すごく短時間の出来事だった。
まあ、僕の証言などあまり意味がない。その場に居たというだけのことだ。防犯ビデオの方がはるかに信頼できると思う。ましてや一週間も経ってからの事情聴取だ。僕の記憶の方があやふやになっている。
しかし、聞くところでは、毎朝のように警察の人が店に来て、僕がいるかどうかを確認しているらしい。こういう事件では何度でも警察の人が訪問するそうだ。先週、今日の約束をしたのに、まさか僕が雲隠れするとでも思ったのだろうか。僕自身に疾しいところはないのだから、僕は逃げも隠れもしないのに、おかしなことをするものだ。
それよりも、そのカードが盗難なり紛失なりの届け出をカード会社が受けているはずである。だから不正使用がすぐに判明したのだ。それなら不正使用される前に使用不可にしてしまえばよかったものを。それを怠ったがために、そのカード会社にも被害が生じているわけだ。ましてや、そのカードがたまたま使用されたというだけの店や店員もえらい迷惑を被っているのだ。もうちょっと何とかならんかったのかねと僕は思う。
聴取の場所は、小さな部屋で、速記者用の机と聴取用の机があるだけだ。ドラマなんかでは、こういう部屋で刑事さんが一本吸うかなどとタバコを差し出したりするのだけれど、僕が尋ねるとこの部屋は禁煙だという返事だった。それに、壁の色も照明もドラマでみるのよりかははるかに明るい。
これもおかしな話で、警察がクリーンなイメージを打ち出せば出すほど、僕は却って怪しんでしまうのだ。これは単に僕がひねくれているだけだろうか。
(寺戸順司-高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー)