6月15日:「祭りの終わりの夢」
夢を見た。こんな夢だった。
(夢)橋の手前で僕は車を降りた。橋を渡る。それは小さな橋で歩行者しか通れない。お祭りの夜、それも遅い時間だった。小雨がぱらついている。橋の上で3,4人の色とりどりの浴衣を着た娘さんたちとすれ違った。僕は「雨が降って困るだろうな」と何となく思った。橋を渡る。その辺りは住宅街だったけれど、何軒かの店がまだ営業しており、店頭で販売している店もあった。この辺りまで来ると、それほどお祭りの雰囲気はない。いくつか店を見て回る。一人の友人とばったり出会った。彼は一緒に飲もうと僕を誘ったけれど、僕は車で来ているからと言って辞退した。彼は既にかなり酔っているようだった。一緒に歩く。彼があるCDの話を始めた。こういうジャケットのアルバムだと言って、彼はギターを演奏するようなポーズをとる。僕は多分あのCDだなと予測した。彼はそのアルバムをまた貸してほしいという。僕は構わないと答えた。ある路地まで来て、彼と別れたが、僕はすぐ振り返って、「ちなみにそのCDはあの店で一緒に聴いたやつか」と尋ねた。彼はそうだと答えた。そこで別れて、僕は大通りの方に行くと、彼が嘔吐している音が聞こえた。
しばらく歩いて、僕はこの辺りに以前勤めていたクリニックがあることを思い出して、そこに行ってみようと思った。どこだったか思い出せない。でも、大通りにすぐ出れて、裏には大きな商店街があって、なかなか便利な所かもしれないぞと思った。あるビルに入って空きテナントがないか見たりした。
結局、前の職場は見つからず、通りを歩く。コンビニみたいな店に入る。店内で大声出してわめいている人がいる。僕は関わり合いたくなかった。すると、何人かの人が「やかましいぞ」と怒鳴って入ってきた。僕はその場を後にする。
車の所に戻る。車は大型のバンのようだった。父がいて、車の中の品物を数人で分けている。その中の一人は女性だった。彼女だけ車の中にいた。彼女が「これ、要る?」と僕に尋ねたので、僕は「要らないからどうぞ貰ってって」と言った。
以上が今朝見た夢だ。
いくつかの場面において、見た順番が違っているかもしれないが、それぞれの場面はよく覚えている。
最後に登場する女性は、以前の夢のシンガーと同じく、未知の女性である。その女性と
関わりが生じている。
まず、場面は夜の遅い時間で、祭りが終わろうとしている頃合いである。祭りが終わるとは、人々が陶酔から覚めて現実の生活に戻ることを意味しているように僕は思う。
祭りのメイン通りから離れた道を僕は歩いている。ある意味で、僕はそういう祭りごとには参加できない人間なのだ。祭りに打ち込むということができない人間なのかもしれない。
橋を渡る。向こう側に行くということ。別の領域に足を踏み入れるという感覚がある。
カラフルな浴衣姿の女性たち。人前に出ていこうとする人格像のようで、前回のシンガーと通じるものを感じる。
住宅街のそこは、どちらかと言うと生活感があり、下町っぽくて、悪く言えば、いささかさびれている。でも、祭りが行われているメイン通りよりも、こういう路地の方が僕は好きだ。こっちの方が落ち着く。
出会った友人。これは男性だった。現実には存在しない人物なのだけれど、夢の中では既知の間柄だった。彼はかなり酔っていた。昔の、酒に溺れていた頃の僕を見るかのようだった。彼には酒と音楽しかない。音楽も人から借りるしかないようだ。彼は嘔吐する。彼が嘔吐しているのを僕は分かっていながら、歩き去った。今の僕の酔っ払いに対する態度もこれに近いけれど、僕は過去の自分をこうして見放しているのかもしれない。つまり、僕は自分の過去と関わることができていないのかもしれない。
過去と関わることができないということは、その後、昔勤めていたクリニックを探し当てることができないという部分にも表れているようだ。その近くまで行っているはずなのに、行き着かないでいる。それどころか、テナントでも空いていないかなと探したりする。
コンビニで大声で騒ぐ人たち。これに近い場面を先日喫茶店で経験した。非常に腹が立っていたのを僕は抑えた。現実にコンビニでこういう人たちに遭遇する。いつもイライラする。騒がしいのは苦手だ。
やかましいと言ってなだれ込んでくる人たちもまた騒がしい。僕は喧騒の場面から退く。事件やトラブルの場面で現実に僕がしていることだ。その場から逃避してしまうのだ。その渦中に入って行くことなんてとてもできない。無責任と思われるかもしれないが、ただそういう場面が怖いだけだ。
車の所に戻る。本当は橋を渡ってこちら側に戻っていなければいけないのだけれど、その場面は夢では見ていないように思う。どこか、こちら側とかあちら側とかいう区別がなくなってしまったのかもしれない。
父が車の所にいた。父が夢で登場することはあまりないので、とても鮮明に覚えている。数人の人たちがいる。この人たちもまた現実には存在しない人たちである。でも、夢の中では従兄弟だったり、僕の知人であったりしている。彼らとは交渉がない。
唯一、交渉があったのは、先述の女性である。はっきり覚えていないけれど、この場面では女性は彼女一人だけだったように思う。
彼女は「これ、要る?」と僕に差し出している。彼女が差し出すものを僕は受け取ることができていないのだ。僕は単に遠慮して「どうぞ、貰っていって」と彼女に返している。実際に欲しいとは感じていなかった。それよりも、僕の関わり方にある種の、僕の典型的な傾向が現れているように思う。
久しぶりに長い夢を見たので、僕はまだこの夢を理解しきれていない。今日一日考えてみるつもりだ。また、明日にでも書くかもしれない。
(寺戸順司-高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー)