5月9日:闘病記―1

5月9日(金):闘病記―1

 僕は腎臓がよろしくないそうだ。将来、透析生活を送るようになると医師からも脅されている。気をつけてはいるのだけれど、トイレの頻度が極端に少なくなったらそれは危険信号だ。
 連休前辺りからそういう傾向が見え始めていた。加えて、毎年連休は父の関係していた仕事のアルバイトに行くことにしている。現場仕事なので一層トイレの頻度が少なくなる。
 連休明けの二日間、昨日と一昨日は、何となく体調がすぐれないなという感じはしていた。そして今日、ついにやってしまった。
 尿として出ていかなくなるから、まず、体が浮腫んだ感じが最初に生じるのだけれど、決定的なのは痛風発作だ。今朝、その兆しが見え始め、お昼までにはみるみる右足先が膨らんでくる。当然、痛みもある。
 おまけに、痛みの随伴現象なんてあるのかどうか僕は知らないけれど、右足に痛風発作が出たかと思うと、同時に左足先がやたらと疼く。これは一昨年になるのか、骨折した箇所だ。そこが疼き始めているのだ。
 今日、定休日だけれど、いくつかこなさなければならない事務仕事がある。両足を引きずりながら職場に向かう。真っ先に考えたことは、臨時休業しようということだった。昔は病気があってもクライアントとの面接はこなしたものだ。骨折していた頃も松葉づえをつきながらクライアントを迎え入れたこともある。もう、そういうことはしないでおこうと思う。クライアントに心配をかけてしまうからだ。それに不健康な姿を見せるわけにはいかないとも思う。だから休もうと決める。
 何件も電話を掛けなければならない。そういう時に限って、変なFAXと重なる。変なFAXとは、「私はこうして売り上げを伸ばした」とか「みるみる内に痛みが消えた」とか「院長さまに特報です」といった類のセールスのFAXだ。こいつらにはウンザリするね。
 電話をかけようとしたら、そういうFAXが入ってくる。僕の電話の方が先だと、FAX中止ボタンを押す。しばらくしてまたそいつらのFAXが入る。僕は電話を使いたいのだ、だから電話を塞がないでくれと、再び中止ボタンを押す。たいていは二回で諦める。ところが今日の奴はしつこかった。三度目が来た。いい加減にせえと、頭に来る。受け取るまで送りつけようという魂胆が気に入らない。
 去年、電子書籍の出版の話が持ち上がったけれど、もし出版していたら僕の書籍もこういう形で売り込まれていたのかと思うと、出さなくてよかったと思う。この手のFAXは、ほぼ100%お門違いのところに送られているものと思う。僕のところに、一方的に送られてくるFAXを見ても、ちゃんと相手を見て送れと言いたくなるくらい専門違いのものばかりだ。売る側に知恵がないのだ。低能なのだ。誰彼かまわず送りつけているのだろうと思う。
 送るのはいいけれど、どこの誰が送ったのかがまったく記されていないというのは、実に卑怯千万だと思うね。つまり、こちらは送りつけるけれど、そちらから連絡はさせないということなのだから。そのために、こちらは「もう送付するのをやめてくれ」と相手に言う権利が奪われてしまっているわけだ。Noと言わせないやり方なのだ。実に腹が立つ。
 話が逸れてしまったな。そういう中断に遭いながらも、連絡すべきところにすべて連絡して、帰宅しようと思ったら、まさかの雨だ。足止めをくらってしまったのだ。
 しかし、この足止めは意味があった。待ち時間の間に僕はいろんなことを考えることができたからだ。振り返ると、体に悪いことをいっぱいしてきているなと思うし、ずいぶん無理をさせてきたとも思う。若い頃は、仕事中はトイレに行ってはいけないなどと考えていたし、我慢する癖がついてしまった。おまけに酒は飲むし、タバコもやるし、こってりしたものは食べるし、時にドカ食いしてしまうし、運動はまったくしないしと、本当に、体に悪いことのオンパレードだ。これを機に少し改めようと思う。

(寺戸順司―高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー)

(付記)
 何かがあると体に意識が向かう。何事もそういうものだ。上手く行かない時になって、初めてそこが意識されるのである。上手く行っている間は意識されないものなのだ。
(平成29年1月)

 

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