4月20日:IT業者へ 

4月20日(木):IT業者 

 

 業者からの営業の電話が最近は多い。今日も何軒かあった。どうしてウチのところに売り込もうなんて気を起こすのかね。僕には不思議だ。特に、IT関係のところが持ち込んでくる商品にはひどいものが多くて、困ったものだ。 

 今日、売り込んできたのは広告商品だった。治療別の広告だという話なので、僕は「治療別ってどういうことですか?」と尋ねたのだ。ただ単純にそこが分からないから尋ねたまでのことだ。 

 例えば、電話帳なんかでは、「各種療法」の中で、「心理・精神」などの分類がなされている。治療別というのはそういうものなのだろうか。それとも、「ロジャース派のカウンセリング」「ゲシュタルト療法」「交流分析」とか、「精神分析」「実存分析」など、さらには「システムアプローチ型家族療法」「パロ・アルト派の家族療法」とか、そこまでの分類を指しているのだろうか。 

 僕には意味不明で、はっきりしない内容だから、その「治療別」の部分を明細化しようとしたのだけど、営業の人もよう答えられんで、なんだか僕がいじめているみたいだった。結局、内容がよく分からんということで断ったのだ。 

 

 最近、多いのはネット予約のサービスだ。仕事で遅くに帰宅する人は予約が取れない。そういう人のためにネットで簡単に予約を取れるというサービスだ。 

 正直言って、僕はこれほど暴力的なサービスはないと考えている。美容室なんかでこのサービスをやっているのは許せるけど、カウンセリングとか臨床家でこれをやっているところがあれば、僕だったら絶対にそこは信用しない。 

 予約を取るということは、一つの契約が成立することである。契約に当たって、料金、時間、場所に関して、双方で確認し、了解しなければならないと僕は思う。料金はこれだけかかります、よろしいでしょうか。何時に始めて、何時に終了します、大丈夫でしょうか。場所はここになります、ご存知でしょうか。私が確認を取り、相手が了承した上で、契約が成立するのだ。ネット予約はその過程をすっ飛ばずのだ。 

この場合、僕は利用者への説明義務、確認義務を果たせず、利用者は説明や確認を取ってもらうこともない。それで契約が成立してしまうのだ。だから暴力的なのだ。 

 その他にも、このサービスが暴力的であると思う理由があるのだけど、それは置いておこう。 

 いずれにしても、予約を取りたいけど、その時間がないと言うような人は、決して来ないのである。100パーセントそう断言できる。そして、そういう人たちのことは僕は眼中にはないのだ。その人たちを捕まえようなんて発想は僕にはないのだ。 

 そもそも、予約を取るという場合、せいぜい2,3分のことなのだ。大抵の場合、それくらいの時間でまとまるし、長くなっても5分程度だ。スムーズに予約が取れた場合、つまり相手の希望する日時と僕の予定とがぴったりとあった場合は、もっと短時間で終わる。帰宅の早い遅いなんて関係がないのだ。2,3分の電話時間を取るか取らないかだけのことなのだ。 

 従って、帰宅が遅くて、予約の電話ができないという人は、不可抗力でできないのではなく、積極的にそれをしていないのだ。そのことが当人には意識されていないのだ。 

それが「抵抗」と呼ばれる現象である。このサービスはその「抵抗」に味方をし、それを助長するものでしかない。その意味で反「治療」的なのだ。最初にその抵抗を助長しているのだから、この人が本当に来談したとしても、電話予約した人よりも難航する可能性が高くなると僕は思うのだ。つまり、カウンセリングを開始する時点で、最初の抵抗を打破した人とそれをそのままにしている人との違いが生まれるからである。 

 電話をかけ、確認と了承をし、時には交渉する。そのようにして予約を取るということが、すでに「治療的」行為であり、「治療」の一環であるわけである。IT業者は知らなくても当然であるけど、そのサービスはマイナス要素を多分に含んでいるわけである。 

 

 もし、IT関連の人がこれを読んでくれたら、この種の商品、サービスを僕のところに売り込むのは遠慮してもらいたい。絶対に僕が断るのだから、お互いに時間を消耗し合うのは止しにしたいものだ。 

 

(寺戸順司―高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー) 

 

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