4月10日:駅で見る不思議な人たち 

4月10日(月):駅で見る不思議な人たち 

 

 4月に入って、新たに電車で通勤通学する人たちが増える。電車通勤に慣れていないためか、時折、変わった人を見かけるのも、この時期の風物詩である。 

 

 今朝、駅のエスカレーターを降りようとしたら、下から上がってくる男性がいた。そっちは上りではなく、下りの方なんだけど、気づいていないようだ。彼がどうするかを見ていると、彼は何事もなかったかのように、下りエスカレーターを逆走してくる。僕はびっくりしたね。反対やでと、声をかけてあげようかと思ったけど、いや、野暮なことはよそう。世間が下りで使用するエスカレーターを敢えて登っていくのは、そこにこの人の主義主張があるかもしれない。もし、そうであれば、僕は応援する。もっと世間に逆走してみなさいとも言いたくなる。彼は僕の横を、息を切らせながらすれ違って行った。それに下りエスカレーターを上ったからと言って、何か罪に問われるわけでもないだろう。 

 

 帰りは帰りで、駅の構内でがっつりご飯を食べている若者を見かけた。別にそれは構わないのだろうけど、ベンチに座ってとかではないのだ。定期券なんかを買う時に使う台の上で弁当を広げて、立って食べていた。 

 ホームに上がればベンチもあるのに。それに、帰ってから食べた方が落ち着くだろうにと僕は思いながら、彼の横を通過していく。これも彼のなんらかの主義主張の表明なのだろうか。 

 

 その他にも、電車に慣れていないのか、乗降にまごつく人とか、改札をスムーズに通過しない人とかも見かけた。初々しくていいなあなんて思うのは僕だけだろうか。 

 

 昔は通勤電車の中で本や、新聞、雑誌を読む人も多かった。最近はスマフォばかりだけど。電車慣れしていない人は、読む姿勢がぎこちなかったりしたものだ。 

 どの分野にも熟練者はいるもので、満員電車でも器用に新聞や雑誌を読む人がいたものだ。新聞を四つ折りくらいにして読んで、器用にページを繰って、次の記事を読むなんて人もいた。雑誌を両開きするスペースがないので、半分くらい開いて、右ページを読むときは右に、左ページを読むときは左にと、交互に首をかしげながら読む人なんかもいたな。自分の立っているわずかなスペース内で、最大限の有効活用をしていたんだなと思う。 

 多分、今の若い人から見れば、彼らの方が不思議だと言うかもしれない。なんでそんな狭苦しい所で、そこまでして読むのだろうって、疑問に思うかもしれないな。 

 でも、そういう風景もだんだん見られなくなるのかと思うと、なんだか寂しい気もしてくる。 

 

(寺戸順司―高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー) 

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