3月14日(土):「ピアノが弾けない夢」
(夢)
「僕はロビーのような場所にいる。でも、そこは倉庫のようでもあった。たくさんのピアノが並んでいた。他の人たちもいて、皆がピアノを弾いている。僕も弾きたいと思い、一台のピアノの蓋を開ける。見ると、鍵盤がひどく歪んでいて、とても弾けない状態だった。他のピアノも見て回る。あるものは鍵盤が欠けていたり、揃っていなかったりするし、他のものは音が出なかったりする。周りでは普通に弾いているのに、僕は弾きたくても弾けなかった」
(連想と感想)
目が覚めて一番最初に思ったのは、これが僕の世界に対する捉え方だなということだった。
他の人にはきちんとしたのが与えられている。僕にだけ不具合のあるものが与えられている。求めているのに、出会うのは不具合があったり、壊れているものばかりだ。これが僕の世界を見る見方なんだと、妙に腑に落ちる感じがした。
自分の出会うものが不具合なものばかりであるために、僕はそれを手に入れるためにさらに追い求めずにはいられなくなる。だから僕はものすごく貪欲だ。
ただ、僕が追い求めたいのは、世間一般の人が追い求めているものとはかなり異なる。こうして僕は周囲との間に隔絶を経験する。この夢では、僕は明らかに周囲の人たちとは馴染めない人間であることを示している。彼らは何の問題もなくピアノを弾いているのに、僕だけが彼らと同じようにはできていないのだ。
昨日の夢でも舞台はロビーのような場所だった。昨日はそこに僕に絡んでくる二人組の男が現れた。今回の夢では、僕はそうした関係性を有していないことが窺われる。誰とも関係しなくなっているのだ。そして、この関係性の消失は、ロビーが半分倉庫のような様相を帯びているという変化を通しても窺われる。
倉庫とは、当然のことながら、品物を置いておく場所だ。物だけが置かれている場所であって、それは人間関係とは無縁な場所だと言えると思う。ロビーのような人がくつろいだり談笑したりする場所は、こうして無人化した場所に席を譲り始めている。僕自身がそうなっているのだと思う。
(寺戸順司―高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー)
(付記)
立て続けに夢を見たのだな。最近は夢をこうして取り上げる機会がなくなった。こういうのをまた始めてもいいなと思い始めている。
(平成29年4月)