2月20日(水):問い合わせの電話
今日は午前と夕方にそれなりの仕事があり、予約が入っていた。午後から少しの空き時間が生まれている。ブログの更新作業を少しだけこなす。少しだけというのは、どうもネットの動きが遅いためである。
昼休み、ちょうどお昼ご飯を食べ始めた時だ。一本の電話が入る。問い合わせの電話だった。一応の対応はしたのだけれど、どうも気持ちがスッキリしない。何て言うのか、きちんと説明していないという不全感が残って仕方がないのだ。だから、この場で僕の考えているところのものをきちんと述べておこう。問い合わせした方が読まれるかどうかは不明だけど、同じような疑問を持っておられる方の助けになるかもしれない。
なお、この問い合わせ者個人のことには触れないようにする。あくまでこの人の置かれている状況だけを拝借させていただくことにする。
この人の身内の方が精神病院に入院しておられたのだ。統合失調症という診断を身内の方はいただいているそうだ。そして、この身内の方には暴力の問題もある。今、この身内の方の退院が決まっているということである。問い合わせした方は、身内の人の退院の準備ができていないということである。そして、この退院が時期尚早ではないかと訝っておられるのだ。こういう状況がある。
問い合わせ者は僕に何を求めているのか、実は最初はそこがはっきりしない感じがした。僕が理解したところでは、この身内の方のカウンセリングを引き受けることが可能であるかということを尋ねたいようであった。僕は別に構わないと答える、ただし、その身内の方ご本人がそれを望むのであればという条件はつくけど。
もう一つ、この方が求めておられたのは病院側の対応、特に退院に関する事柄について、僕の見解なんかを知りたかったようであり、場合によってはその病院に働きかけてほしいという感情も含まれていたかもしれない。これに関しては僕には何も言えない。
何も言えないというのは、まず、それは身内の方と病院との間でなされた「契約」であるからだ。退院が時期尚早であるかどうかは、僕には判断できない。というのは、その治療の経緯なども分からないからである。その医師がどのような治療計画を立てているのかも僕には分からないからである。
ところで、次の部分が重要である。身内の方は統合失調症という診断を貰っている、もちろんどういうタイプの統合失調症であるかは僕には分からない。暴力問題も、統合失調症の一環として現れているものだとは思うのだけど、確かなことは僕には言えない。しかし、医師は時間をかけて診断するものだと思うので、この診断はそれなりに正しいものと仮定しよう。身内のその方が統合失調症であるなら、尚更、第三者が割り込んで、関係を複雑化してあげない方が良いと僕は思う。つまり、医師とその方との関係が形成されているわけであり、そこに第三者が割り込むと、この人にとっては二者関係であったものが三者関係になるということであるから、人間関係がそれだけ難しくなってしまうわけだ。こうなると医師との関係も悪くなってしまうかもしれないと僕は危惧するのだ。
この身内の方が僕のカウンセリングを受ける。この人と医師との関係、僕とこの人との関係がそれぞれ生まれることになるわけだけど、そこを混ぜ合わせるようなことは控えた方がいいと僕は思う。従って、医師との治療は、それはそれで継続し、僕とのカウンセリングは病院の治療とは別に実施していくことになる。双方を個別化してあげた方が統合失調症の人には適応しやすいと思う。あっちはあっちで適応して、こっちはこっちで適応してという方がいいわけである。あっちにもこっちにも同時に適応するという事態になると、この人にとっては苦しいものになるかもしれない。
では問い合わせ者の要求に応じるにはどうすればよかったのかという問題が起きる。これは簡単である。退院についての疑問があるなら、その退院を決定した病院に説明を求めればいいということである。もう少し入院させてほしいということであれば、病院にそのように訴えればいいのである。つまり、それは問い合わせ者と病院との間で話し合われる事柄であり、僕はそこに関与するわけにはいかないのである。
さて、僕はこの問い合わせ者個人のことには踏み込まないということを最初に申し上げた。あくまでもこの人の置かれている状況を借りて説明したつもりである。いっそのこと、まったくのフィクションで説明しても良かったかもしれない。ここまでの記述において、この問い合わせ者に属すると思われる問題点がすでに4点ばかり含まれいるように僕には映るのだけど、そこは触れないでおこう。
(寺戸順司―高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー)