2月20日:VIVAマカロニ~『二匹の流れ星』 

2月20日(月):VIVAマカロニ~『二匹の流れ星』 

 

 この映画、海並びに海岸から始まる。西部劇に海は相容れない感じがするのであるが、この相容れない感じはジャンゴとマヌエルを象徴するかのようだ。 

 賞金首を町へと運ぶ賞金稼ぎのジャンゴ。砂漠で一人の男とすれ違う。マヌエルである。お互いに何かを感じたのか、止まって相手を正視する。すでに二人の間で静かな火花が散り始めているような緊迫感が漂う。オープニングからここまでの冒頭がよくできていて、印象に残る。 

 町に着くと、砂漠ですれ違った男が指名手配されており、マヌエルであることをジャンゴは知る。 

 その頃、マヌエルは裏切者のメンドーサの牧場へ押し入っていた。メンドサ―のせいでマヌエルは4年間も囚人生活を送ったのだ。マヌエルはメンドーサの一人娘を奪い去る。メンドーサは、マヌエルを殺し、娘の奪還をジャンゴに依頼するが、その守銭奴ぶりが祟ってジャンゴから断られる。 

 町のバーにて。ジャンゴは誘われてポーカーテーブルにつく。暗いところから姿を見せるマヌエルがカッコいい。再び両者が顔を合わせる場面だ。このポーカーのシーンもまた一つの見どころだ。 

 このバーの女主人ミジャヌーはジャンゴとは相思相愛の仲である。彼女はジャンゴとともに都会に住みたいと願い、賞金稼ぎなんてやめてほしいとジャンゴに頼むのだが、都会で生きるとなると金がいるから、あと一回大きな賞金首を仕留めてからにしようとジャンゴは答える。彼女はそれでも数週間後には都会に行くと宣言する。 

 ジャンゴはマヌエルの賞金が上がるのを待ち、そのために彼らの馬車襲撃に手を貸すことになったのだが、ジャンゴはそこで最愛の人を失う。ジャンゴは、金のためではなく、愛した人のために戦いを挑んでいく。 

 

 本作でジャンゴを演じるのはジャンニ・ガルコだ。カトリーヌ・スパークと共演した青春スターであったが、イメチェンをはかり、マカロニスターとなった(と僕が勝手に評価している)人である。マカロニ作品ではサルタナが当たり役になったのだけれど、粗野で武骨なキャラを演じていても、どこか品の良さを僕は感じる。 

 ミジャヌーを演じたのはロレダナ・ヌシアクさんだ。エキゾチックな顔立ちの美人さんだ。『続荒野の用心棒』では見せることのなかった笑顔も本作では拝める。 

 マヌエルを演じたのはクラウディア・カマソだ。ジャン・マリア・ボロンテの実弟である。兄の後を追って映画界に入り、いい調子でキャリアを積んでいたのに、その後、役に恵まれなかったそうだ。確かに、『女ガンマン・ガーター・コルト』の悪役などひどいものだった。そして自殺で生を終えている。本作はそんな恵まれなかった彼の魅力がフルに発揮された貴重な作品だと僕は捉えている。マヌエルは、他のマカロニ作品に登場する悪役のような残虐非道な感じが薄く、冷酷さとはまた違ったクールさを僕は感じる。その上、スマートでどこかストイックな感じを受ける。いかにもワルという感じの悪役ではなく、カッコいい悪役なのである。 

 その他、マヌエルの父親役で、やはり山賊役をフェルナンド・サンチョが演じる。山賊役はこの人の定番である。 

 写真屋でジャンゴの協力者であるフィデリオをフィデル・ゴンザレスが演じる。また山賊側にギャンブルじじい(としか名前がない)がおり、これをビヌッチオ・アルディアが演じる。この二人は本作ではユーモラスな存在で、シリアスな物語に違った色どりを添えてくれてるようだ。 

  

 淀川長治は本作のジャンゴとマヌエルを武蔵と小次郎に喩え、「西部劇版巌流島の決闘」と評している。さすが淀川さんだ。善玉と悪玉の対決ではなく、どこかライバルどうしの戦い、お互いに相手に一目置いている者どうしの戦いといった観があり、そこに本作の魅力を僕は感じる。 

 ジャンニ・ガルコクラウディア・カマソいい。ロレダナ・ヌシアクもまたよろしい。フェルナンド・サンチョのオヤジぶりもまたいい。登場人物たちが僕にはとても魅力的に映る。 

 

寺戸順司―高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー 

 

 

 

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