2月15日(金):散々な一日
夜勤明けで一日仕事をしていた。夕方辺りからひどく具合が悪くなった。横になる。いつしか眠り込んでしまったようだ。目覚めると、留守番電話にメッセージが入っていることに気づいた。建物の管理人さんからだ。夜も遅くなったから、仕事していないのなら早く帰って欲しいというメッセージが吹き込まれていた。夜の9時半を回っている。申し訳ないなと思いつつ、一方では、残りたくて残っていたわけでもないのにと立腹しつつ、そそくさと職場を後にする。
何か食べたい気分だった。ある食堂に入る。店員が見向きもしやがらないので、何も注文せず、そのまま店を出る。しばらく歩く。一杯ひっかけて帰ろうと決める。
時々足を運ぶ居酒屋に入る。そこでもラストオーダーの時間になっていた。大したものも食べず、何杯か飲む。上手い具合に顔見知りは一人もいない。僕は誰にも絡まれずに静かに飲めるなと安心する。とても人の相手をする気分にはなれないのだ。
飲みながら、今日一日を振り返る。なかなか多忙で、おまけに散々な一日だったなあなどと思い返している。バタバタした割には充実感もなく、虚しいような気分でいっぱいだった。
その店の店長や店員さんが声をかけてくれる。かけてくれた声には応対するけれど、それ以上は話す気になれなかった。今日は静かですねと二人ともそう言う。そういう時も人にはあるものだろうに、そっとしておいてくれんかいなと、心の中では思っている。
バイトの女の子がバレンタインの「一日遅れだけれど、これあげる」と言って、僕に小さなチョコレートを一つくれた。その子とはあまり言葉を交わしたことはなかったと思うのだけれど、彼女の方は僕のことを覚えてくれていたようだ。時々、来られますよねと彼女は言っていたから、何となくでも覚えてくれていたのだろう。
帰りの電車の中で、彼女から貰ったチョコレートを食べる。何となく、嬉しい。人が覚えてくれているというのが嬉しかった。声を掛けてくれた店長さんも、その気遣いに感謝しないといかんなあと思っていた。僕があまりに不機嫌そうだったんじゃないかと、少し心配した。
散々な一日の間にも、嬉しいことやいいことがあるものだ。そんなに腐る必要もないなと、今は思えている。
(寺戸順司-高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー)