12月2日:キネマ館(2)~10月・11月に観た映画(2) 

12月2日(日):キネマ館(2)~10月・11月に観た映画(2)

 僕は昔の映画が好きだ。映画は1970年代までだと思っている。80年代になると、特撮技術が発達して、SFXなるものが生まれた。さらに現在ではCGだ。どうもその手の映像が僕は苦手なのだ。映画が手作りだった時代の作品がやっぱりいい。

 今回取り上げる映画は『フレンチコネクション』だ

 

4『フレンチ・コネクション』

 子供のころ、テレビでこの映画を観たことがある。内容はさっぱり覚えていないけど、カーチェイスシーンは見覚えがあった。それくらいしか印象に残っていなかった。

 一度、きちんと観てみようと思い、レンタルする。いやはや、これはこれですごい映画だなと思った。街中でロケを敢行し、全編ドキュメンタリータッチで撮影されている。つまり、限りなくリアルな映画である。

 フランスからアメリカに流れる麻薬の密輸ルートを絶とうと二人の刑事が活躍する。ドイル刑事に扮するのはジーン・ハックマンで、その相棒の刑事をロイ・シャイダーが演じる。なかなかいいコンビである。ハックマンは刑事としては優秀だけど、人間としては限りなくダメ人間である。シャイダーが奥さん役で彼の面倒を見るという、そういうコンビだ。

 敵役はフェルナンド・レイが演じる。この人はマカロニウエスタンでお馴染みになったけど、いい俳優さんだなあと思う。今回も、優雅で紳士的な悪人を演じている。

 監督はウイリアム・フリードキンだ。けっこうな変人ではないかと僕の中では評価されている監督さんだ。これは『エクソシスト』よりも前の作品ということになるのか。

 

(カーチェイスよりも地下鉄シーン)

 さて、この映画、カーチェイス場面が一つのウリである。確かに、派手なアクション、目の覚めるような場面というのは、ここだけである。ハックマンが殺し屋に狙われ、その殺し屋をどこまでも執念深く追いかけていくシーンだ。

 でも、僕は敢えてその場面を外そう。一番よかったのは、地下鉄の尾行シーンだ。ホテルから出てきたレイをハックマンが尾行する。地下鉄へ降りる。レイは尾行に気づく。ハックマンを撒こうとするが、どこまでも執拗に尾行してくる。無言の駆け引きがなされる。なかなかスリリングな場面だ。しかし、悪役のレイの方が一枚上手だった。地下鉄の車中からハックマンに勝ち誇ったような表情で手を振るレイは、ほんと、小憎らしいと思ってしまった。

 

(悪もうまくいかない)

 刑事たちの捜査も難航するが、悪側も然りである。本作では、フランスで作った麻薬を、渡米するテレビスターを密かに運び屋として利用する。このスターの車に麻薬を隠し、アメリカへ車もろとも渡らせるわけだ。

 このテレビスターが怖気づいて、レイとの契約を打ち切る。つまり、便利な運び屋が途中からいなくなってしまうわけだ。

 さらに、麻薬を密売するバイヤーの交渉も難航する。なかなか交渉が成立しない。その間にも刑事に目をつけられ、尾行がなされる。

 悪側は焦りを見せて、厄介な刑事を殺そうとする。これが殺し屋とのカーチェイスシーンに発展するわけだ。

 要するに、これは見事な演出である。悪側の計画がスムーズにいかない場面を見せることで、正義側に勝つ見込みが生まれることになる。もしかすると刑事たちの捜査が間に合うのではないかと観客は期待してしまうわけだ。

 この期待のおかげで、ラストシーンの衝撃が強まることになる。まさか、ラストで刑事たちが犯人を逃してしまうなんて、思いもしなかった結末を観客は見せつけられることになるのだ。この衝撃の強度は、刑事たちの勝つ見込みや期待の大きさと比例しているように僕は感じた。ここはよく練られた部分であると思った。

 

(真似したい尋問)

 他にも感心するところが本作にはある。それは刑事たちの尋問シーンだ。大抵、ガンガン責める役と宥め役という役割が決まっている。前者をハックマンが、後者をシャイダーが担うことになる。なかなか適役である。

 見どころは役割分担だけではない。訳の分からない話をして容疑者に動揺を与えて聴きだす手法や、大きな罪の容疑を被せることで小さな罪の自白を迫る手法なんて、素晴らしくてぜひとも真似したいと思った。もっとも、そんな場面は僕の生活に訪れることなんてないだろうけど。

 

(シンガーたち)

 おっと、もう一人というかグループを忘れるわけにはいかない。ハックマンたちが訪れたバーのステージで歌う三人組だ。これはスリー・ディグリーズだ。歌っている曲は「Everybody Gets to go to the Moon」。

 彼女たちがブレイクするのは、この映画のもう数年後のことだ。ディスコサウンドとして彼女たちの歌が売れたのだが、この頃のソウルフルで溌剌とした歌の方が僕には魅力的である。

 この映画の頃には、グループを結成して4,5年くらいは経っているのではないかと思うのだが、全然ヒットに恵まれなかったのだ。大きく売れるということがなかったのだ。グループにとってはそういう不遇の時代であったにも関わらず、元気に歌っている姿が見られるのは嬉しいことであるし、何というのか、勇気づけられる思いがする。

 

(唯我独断的映画評)

 さて、この映画の独断的評価は、間違いなく5つ星である。

 

(寺戸順司―高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー)

 

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