11月5日(火):転売ヤーたち
転売ヤー(以下、ヤー)たちは面倒くさいものだ。
セブンでポケモンカード(以下、ポケカ)買うのかどうかで逡巡してる客がいた。スマホで何か検索している。僕はそれに延々と付き合わされることになった。と言うのも、ポケカがレジ横に置いてあるためである。
結局、その客は15パック買っていった。選ばせろなんて言わなかったのが救いである。
ローソンの方では選ばせてくれという客がいた。1パックずつ手に持って、重さを測っている。こっちよりこっちの方が重いとか、両手に持って測っている。それで中身がわかるのかと僕が問うと、彼らは「分かる」と答えるのだから驚きだ。そして「俺たちはこれでメシを食ってるプロだからわかる」などという。なんとも情けないプロだと思った。それに、彼らを見ているととても「プロ」などと呼べるものではない(これは後で述べよう)とも思った。
彼らのやってることが僕には後になって分かった。ポケカのレアカードは、ほかのカードと違って、アルミコーティングされているらしい。だから、その分だけ重量が増すわけだ。彼らはそれで重さを測っていたわけだ。
ツワモノになると、金属探知機なんかを使用するそうだ。箱買いして、一つ一つに金属探知機を当て、反応した袋にはレアカードが入っているわけだ。その他のカード、つまりレアカードが含まれていない袋は別ルートで売りさばくのだそうだ。
そんなことをしないと金を稼げないヤーたちはちと情けない。
でも、俺たちはこれでメシを食ってるプロだって言うんなら、手に持っただけで判断しろとでも僕は言いたい。あんな、両手で持って、こっちの方が重い、いやいやあっちの方が重いなどと議論しあっている姿はとてもプロとは言えない。
例えば、通常のパック、つまりレアカードの含まれていないパックだけを持ち、その重さを徹底的に体に覚えこませたら、それ以外のパックは持った瞬間に弁別できる。それくらいの域まで達しないとプロとは言えないな。
しかし、こんなのいくらでも対策が立てられる。ポケカは1パックにカード5枚が入っている。ウエーバーの法則を転用すれば、これを1パックにカード10枚にすれば弁別できなくなる。また、パッケージに少量のアルミを使用すれば、それだけで金属探知機が無意味になる。ヤーたちは後は透視能力を身に着けるしかなくなるだろう。
あと、これは僕の個人的な印象というか体験であるので、そういうものとして読んで欲しい。決してヘイトスピーチをするつもりではないということだけは断っておきたい。
僕はヤーたちが怖いと感じる時がある。特に彼らの目が怖いと感じてしまう。どこか虚ろで、生気を欠いたような目をしている人が多いように感じている。どこか、人間味というか、人間的な情感が欠けているような印象を僕は受けてしまう。要するにプレコックス感情のようなものを僕は抱いてしまうわけだ。
実際、ヤーたちの「仕事」っていうのは、非常に「自閉的」な営みであるように僕は思う。ひたすらレアカードを求めてさまようとか、レアアイテムの入手に奔走するとか、そういうことばっかりやってるような気がする。そういうことを長く続けていると、やはり精神衛生上問題が生まれるのかもしれない。
だから、ヤーたちが嫌われるのは、彼らのそうした行為によってではなく、その人格によってなのかもしれない。
僕が思うに、ふつうは買い手のニーズがあってモノが売れる。ヤーたちは買い手のニーズを扇動する。レアなアイテムが買えなければ諦めたらいいだけのことである。ヤーたちは、そこを諦めさせず、買い手のニーズを扇情していることになる。しかし、このことは、ヤーたちがいかに買い手に依存しているかを表しているようにも思えてくる。つまり、買い手のニーズがあって、売り手がそれを販売する場合、買い手は売り手に依存する形になるわけなんだけれど、ヤーとその買い手とはその立場が逆転しているように僕は思うわけだ。
カードもグッズも、いくらでも作ることができる。レアなアイテムだっていくらでも製造できる。そんなのを熱心に追い求めなくてもよさそうなものである。レアなものを所有しているからって、それで自分の独自性が増すわけでも、特別な人間になるわけでもないのである。買い手とヤーは案外似たもの同士であるかもしれない。
(寺戸順司-高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー)