11月10日:弁償と廃棄 

11月10日(日):弁償と廃棄 

 

 昨夜はローソンのバイトだった。 

 お客さんが缶ビールを落として破損させてしまった。缶に穴が開いて、床がビール浸しになっていた。お客さんも申し訳なさそうだった。 

 僕はそれを夕勤のおばさんに報告する。その人はいきなり「弁償するって(言ってましたか)?」と言う。そんなことを言われたら弁償してもらっていない僕の方が何か悪いことをした気持になる。 

 店側としては弁償してもらいたいところだろう。でも、店内の事故であるから店側が負担することになるものと僕は思い込んでいた。 

 もちろん、悪質ないたずらとかだったら弁償してもらうのが筋というものだろうけれど、今回のはそういう性質のものではなく、あくまでも事故である。故意に破損させたわけではなさそうである。 

 いやいや、そこじゃない、腹立たしいのは。そのおばさんである。いきなり弁償のことを切り出してきた。そこなのだ。どうして「お客様は大丈夫でしたか」とか「お客様の服にかかったりしてなかったですか」などということが言えんのだ。僕は数人からそのおばさんの不評を聞いたことがあるのだが、納得だ。冷たすぎるのである。 

 それに、弁償してもらったらその時はいい。店側としては損失がない。しかし、それで客が不満に思えば、その客は店に来なくなるかもしれない。わざと落としたわけではないのに、弁償させられたなどと、それこそSNS上で書き連ねられたら店としても評判が悪くなる。長い目で見れば、缶ビールの一本程度の損失を引き受けた方が得というものだ。たかだか230円くらいのものだ。今後生じうる損失を考えると安いものである。 

 でも、店に損失はなかった。僕は腹が立ったので、結局、その破損缶ビールを僕が買い取ったのだ。何が弁償させろじゃ、これで文句は言わさんぞ 

 そのおばさん、カフェでも客が誤操作したら弁償してもらってるなどと言っていたな。あまり極端なことはしない方がいい。利益を追求するのはけっこうなことであるし、損失を控えるというのも大切なことであるが、客に不愉快な思いを残さないようにすることも不可欠なことであると僕は思うのだが。 

 

 正直、そこの損失よりも、デザートの損失を何とかしてほしいものだ。テレビ番組とタイアップしたかなんかで、ある商品が大量に入ってきた。売り場に並べ切らないほどである。スイーツなので、あまり棚に詰め込むというわけにもいかない。くずれたりすると売れるものも売れなくなってしまう。だから並べ切らないものは在庫となる。在庫で眠っている間にも賞味期限は近づき、それだけ販売時間が短くなる。過去には、それでそのまま廃棄になってしまったなんて話もあった。 

 テレビ番組なんかで左右されないでほしいものだ、と僕は思っている。テレビ番組などで紹介されると売れ行きが伸びるというが、かなり眉唾ものの話だ。つまり、ローソン全体としてはすごく売り上げが伸びたということになるのだろうけれど、一店舗ごとに見ていくと、そこまで伸びたわけではないかもしれない。通常よりも2割3割伸びる程度であるかもしれない。一日10個くらい売れていたのが12個、13個程度に売れるようになっただけかもしれない。一店舗につき、2,3個売れが伸びても、全体として見ると相当数の売れ行きとなるわけだ。そこを見極めないといけないと思うのだ。 

 そうだな、通常の1.5倍からせいぜい2倍といったところで十分ではないかと僕は思っている。5個くらい仕入れていたのを、8~10個くらいにすれば十分足りるだろうと思う。 

 結局、何が言いたいのかと言うと、客に弁償させることよりも、他のところの損失を防ぐ方が先決だろうということだ。 

 

 食品廃棄はやはり心が痛む。多少の廃棄が出るのは構わない。それは商売にはつきものだと思う。ただ、それがあまり多かったりすると悲しくなる。生産者(それは製品だけでなく、食材の生産者も含めてだが)があの場面を見たらさぞ嘆くことだろうと思う。捨てられるために作ったのではないなどと憤るかもしれないな。 

 商品が大量に入ってくる。あのローソンではそれがある。僕の中ではこれは多すぎるぞと思う。そこまで売れるとは思えないのだ。案の定、そういう商品は売れ残る。値引きして売ってもまだ売れ残る。そうなると廃棄だ。廃棄になると店の損失となる。利益を生み出さないのなら、何のために働いているのかも分からなくなる。 

 そもそも、今は長く売れる商品というものはそうそう生まれない。30年前からそうだと僕は感じている。つまり、売れるのは最初だけである。その傾向は30年前よりも顕著になっているかもしれない。最初だけ売れるのだけれど、その最初の期間も短くなってるような気がする。 

 いずれにしても、メーカーもそのつもりなのだ。次から次へと新商品を開発する。その時だけ売れるという商品が大部分だ。一つ売れると、その商品を継続して生産するのではなく、シリーズ化して、多様化するなんてこともある。そうして新作を次々に打ち出している感じがする。 

 それはちょうど、スマフォの画面をスクロールするようなものだ。次から次へと目の前に展開されていくというのが重要なのだ。店の売り場も然りだ。新商品を次々に投入して、売り場を刷新していくことが重要なわけだ。そうしないと売れない時代になっているのだろう。 

 バブル期の頃だったら、売り場にボリュームを持たせたるということが大事だっただろう。商品がでーんと山積みしてあったりすると、それだけで購買欲がそそられたかもしれない。今はそんな時代じゃない。むしろ、売り場が短期間で刷新される方が、購買欲と言えるかどうかわからないけれど、客が店に足を運ぶ動機づけになりそうに思う。常に新しいものが展開されるというのがいいのだろう。 

 

 まあ、どうでもいい話ではある。ウチも経営者のはしくれなので、多少、経営者目線の話もしてみたかっただけである。 

 

(寺戸順司-高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー) 

 

 

 

関連記事

PAGE TOP