10月27日:少年飲酒者 

10月27日(日):少年飲酒者 

 

 昨晩、バイト先で腹立たしいことがあった。未成年が店で酒を購入したということで警察が来たのだ。 

 まず、時間順に述べよう。その時間は二人体制だった。僕とNさんの二人で勤務していた。Nさんは移動があるが、僕は朝までの長時間勤務だった。僕は休憩を取ることになっていた。Nさんは気を使って、彼が移動するまでに僕の休憩時間を確保してくれたのだ。 

 僕が休憩開始の勤退を切ったのが23時17分だ。Nさんが未成年者(以下、少年)にお酒を販売したというのが23時27分のことだった。僕が休憩に入って10分ほど後の出来事だった。休憩を開始した僕は、真っ先に駐車場に出て、灰皿のところで一服していたから、その間の出来事だった。 

 腹が減ったから、パンを一個購入して、事務所内で食した。食べ終わって店内に出てみたら、警察がNさんを聴取しているところだった。どうしたのかと訊くと未成年に酒を販売してしまったと言う。 

 正直に言って、売ったのは僕だろうと最初は思った。Nさんがそういうことをするとは思えなかったからだ。でも、詳しく話を聞くと、やはりNさんだったそうだ。彼が言うには、未成年かどうか迷ったそうだ。 

 

 未成年者に酒やタバコを販売してはいけないという法律があるのは僕も知っている。間違った法律であると僕には思える。客が求めているものをどうして販売してはいけないのだと思う。法律で禁止されていることをやった少年の方に罪があるはずである。でも、少年は罪に問われず、売った側が罪に問われるというのがそもそもおかしいのである。 

 腹立たしいのはそこである。こういう件で廃業した店を僕はいくつか知っている。小売店もあれば飲食店もある。店側、店員側が本来の被害者なのである。そんな客が来なければ問題なかったのである。 

 そういう少年は疫病神みたいなもので、店には災厄しかもたらさないものだ。店にとっても招きたくない客である。そういうのが来たら、店は不運だと諦めなければならないのだ。それもまた腹立たしい。本当はそういうのを野放しにしている司法に罪があると僕は思うのだが。 

 もう一つ付け加えておくと、警察がNさんを聴取するのは構わない。でも、なんであんな店内でそれをするのだ。まるで見せしめのようだ。人(つまりほかのお客さんたち)の目に触れないようにという配慮ができないのか。本当に腹立たしい。 

 

 次に、飲酒少年が単独で酒を買いに来た場合、そして、年齢確認ボタンをなんら躊躇なく平然と押せる場合、それは常習飲酒者である。僕はそう捉えている。その少年が常習飲酒者であるが故に、ある店舗で買えなくなると、他の店舗で買うようになる。こうして一人の飲酒少年が方々の店に迷惑をかけ、閉店の危機にさらすものだと思う。ひどい場合には、万引きしたり、カツアゲしたりなんてこともやらかす(僕はタバコでこれを経験している)。違法少年の方こそ罰則が必要なのである。 

 そして、その少年が常習飲酒者であれば、周囲が何をやっても手遅れである。さっさとアル中専門の精神病院に送り込んだ方がいい。店舗や店員に罰則を課すより、はるかに少年を助けることになる。少年を保護しようという観点に立てば、絶対にその方がいいと僕は考えている。 

 話が飛躍し過ぎだと思うだろうか。僕はそうは思わない。法を破ってでもそれを求めるというのは、立派な依存症であるからである。僕も酒呑みだし、数々の呑兵衛を見て来たから少しは分かるのだけれど、大人でも法を破ってまでして飲むのがいるものだ。盗んだり、ツケで飲んで踏み倒したりなんてことをする輩がいるものだ。他人の金で飲むなんてのもおる。そういう連中はまず廃人まっしぐらだ。少年の頃から飲み始め、単独でコンビニなんぞに平気で酒を買いに来るってのは、将来そうなるのが目に見えている。だから少年を保護したければ、それをアルコール依存と捕え、早期に治療プログラムに乗せた方がいい。年齢が若いほど依存症の速度は速いものである(と僕は思っている)し、年齢が若いほど治療は効果を上げるもの(これは確かだ)だからである。 

 従って、少年を保護するはずの法律が、現実には方向違いのものになっていて、まったく少年を保護する機能を果たしていないのである。僕にはそう見える。販売店や店員に罰則を設けるというのは、政治がこの問題に無関心であることの現れである。 

 

 お酒やタバコの販売時に身分証の提示を求めれば問題は解決すると思うかもしれない。実際はそう簡単なことではない。 

 まず、相手が素直に身分証を見せてくれない場合はどうするのか。忘れたとかなんとか言ってゴネる客もおるわけだ。そんなのに店員の手が取られるわけだ。 

 また、身分証となるものを提示してもらった時、その人の個人情報がどうしても見えてしまうのである。僕はこれが不愉快である。その人の年齢だけ知ればいいのだけれど、同時に、その人の姓名や住所までも見えてしまうのである。なんだか見てはいけないところのものまで見てしまった気分に僕はなってしまうのだ。 

 もし、それをするなら、店員にオーソリティを付与すべきである。少々個人情報が見えても許可され、少々強要しても法律によって店員が保護されなければならない。ところが店員にはなんの権利も権限も権威も与えられていないのである。苦情でも言われたら店員がまた悪者になってしまうのが目に見えるようだ。 

 

 未成年に酒たばこの販売を禁じるのはけっこうだが、店員をだましてまでそれらを購入する未成年が罪に問われず、だまされた店員に罪が問われるというのが間違っているのだ。いっそのこと、年齢を問わず、酒たばこを購入する際には絶対に身分証を呈示するっていう法律を作ってくれたらいい。身分証の提示なくしては、明らかに大人であっても、酒たばこが買えないようにしてくれたら済む話なのである。 

 

(寺戸順司-高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー) 

 

 

 

 

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