10月2日:クレーマー対処

10月2日(木):クレーマー対処

 昨日の話で思い出したことが一つある。
 あるお店の女性店員さんだったが、彼女はクレームが怖いと、特に最近のクレーマーは怖いという話を僕にした。
 まあ、カウンセリングの場ではなく、お酒の場だったのでそんなに真剣に考えなくてもよかっただろうけれど、僕は彼女の話を少し聞いてみた。
 彼女の言うところでは、怖いのは土下座を強要するようなクレーマーのことらしい。
 僕だったらこうするという条件で、僕の考えを彼女に教えた。
 まず、僕に何か落ち度があって、客が怒ってクレームをつけてくるとする。そして相手が土下座して詫びろなんて言ったら、僕はそこで相手の氏名、住所、電話番号を聞いておく。裁判に必要になるからだ。
 自分の落ち度を詫びないというわけではない。僕の落ち度に対して土下座が正当かどうかをまず裁判所に判断してもらおうということだ。裁判所に判断を伺うということは、僕たち一人一人に認められている権利だ。そして、裁判所がそれが土下座に相当すると判断すれば、その時は相手に土下座して詫びようと思う。
 僕は法律には疎いのだけれど、性質の悪いクレーマーの大部分は恐喝罪が立証できると思う。それなら一気に刑事裁判に持ち込めばいいと思う。
 そもそも店員が客に強要されるままに土下座してしまうのは、相手に詫びるつもりでしているのではない。単に厄介払いをしたいからだと思う。相手のいいなりになって、そして相手に早く引き上げてもらいたいということなのだと思う。
 しかしながら、土下座を強要する方は、それで力を得ることになる。写メに撮って、ネットで流してというようなことを平気でする。もはや土下座した店員は非人格化された存在になっている。
 このクレーマーにどれだけの罪、賠償を求めることができるだろう。クレーマーは表に出ることはなくても、土下座した姿をネットに流されるということは、その店員たちはもはや彼らの生活並びに人生において匿名性を保てなくなっている。それはお店とその店員の今後の人生にも影響を与えることになる。
 それ以外にも、強制的に土下座をさせられるということ、さらにクレーマーの悪質さや陰湿さに曝されてしまうことなどは、相当な心的外傷をもたらすだろう。それが時間的には数分の話であれ、治癒には何年もかかるだろう。
 賠償は相当な額に達するだろうと思う。クレーマーも覚悟してクレームすることだと思うね。そのクレームに一生をかけるくらいの気持ちで臨まなければならないだろう。生半可な気持ちでクレームを吹っ掛けるとしたら、いくらでも後で報復しようがあるのだから注意した方がいいと僕は思うね。

 いつだったかテレビの報道番組でこういうクレームの一部始終を見たことがある。最終的にクレーマーは店長と店員に土下座させたのだけれど、まあひどい光景だった。
 あのクレーマーは、怯える被害者をどのように切り刻んで料理しようかと悦に入ってる猟奇殺人者のように、僕には映ったね。ひどいもんだ。人類の退化を僕は感じる。
 個人的に、ああいうクレーマーを研究したいという気持ちが僕にはある。クレーマーはちゃんと相手を選んでいると僕は考えている。そこで、どういう相手を選ぶかによってクレーマーの種類も分けられるだろうし、タイプ分けできれば各々のタイプに対しての対処法も講じることができるだろう。

 ずいぶん話が逸れてしまった。冒頭の女性店員に戻ろう。彼女は、夜は飲み屋で働いて、昼間は販売業をしているそうだ。どちらも客商売なのでクレーマーが怖いと言うのも分かるような気がする。
 裁判所に判断を仰ぐという僕の案を聞いて、彼女は安心したと言った。それでいいと思う。僕の案が現実に可能かどうかは僕自身試したことがないのでなんとも言えないのだけれど、何か一つでも対処策を講じてくことは、闇雲に恐れるよりはるかにましなことなのだ。そうそう、それを今日は書き残しておきたかったのだ。

(寺戸順司―高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー)

(付記)
 クレーマーに怯える彼女のなんと弱々しかったこと。僕はそんな彼女が可愛いと思える。でも、それを見せてしまうことがクレーマーに付け入らせることになると思う。堂々としていればいいのだ。そして、恐喝罪のタイミングまで待てばいいのだ。相手が墓穴を掘るまで待っておればいいのである。
(平成29年2月)

 

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