10月13日(火):無駄にしたら勿体ない
この三日間、土日月ですっかり疲れてしまった。月曜日はそれほどでもなかったけれど、土日がけっこうたいへんだったのだ。今日は定休日なので、ゆっくり休もうかと考えていた。
午前中、ずっと原稿を書いて過ごす。事例を書いている。このサイトに掲載する予定のものだけれど、ボツにするかもしれない。でも書いておく。
書いていて行き詰る。もう一回、全体の流れを再構成しようと思い、近所の喫茶店に入ってメモを取りなおす。一番神経を使うのは、個人が特定されないようにすることだ。クライアントが話された一つ一つのエピソードを検討していく。いささか特殊だったり特徴的なエピソードは、本当はそういうものの方が興味が持たれるのだけれど、他の人のエピソードと差し替えたりする。実際、面倒な作業ではある。
2時間ほど喫茶店で頭を絞って、一応、形にはなった。それからどこか歩きに行こうと思い立ち、計画もなく歩く。
歩いていると、トイレに行きたくなった。すぐ近くにホームセンターがあるので、そこまで行こうと決める。ホームセンターの中を見て回る。あれも買おうと思っていたのだとか、これを揃えとこうと考えていたのだとか、いろいろ思い出す。財布に毒だ。
帰宅して、くつろぐ。テレビを観る。「オトナの社会科見学」というBSの番組だった。東京と大阪の商店街を紹介していた。大阪は天神橋筋商店街だ。しばらく行ってないなと思いながら見る。
どこの商店街であれ、働いている人たちの顔がいいね。客商売で身に付いた部分もあるんだろうけれど、皆さんいい顔をされているなと、そう感じた。彼らの言葉の中にも光るものがたくさん感じられた。おそらく、その商売をずっと続けていなければ出てこないような言葉もあった、僕にはそう感じられた。見て良かった。
実際、僕自身、商店街を歩くのが好きだった時期がある。本当は今でもそうだ。各駅前の商店街めぐりをしようと計画したこともあったな。派手な商店街より、地元の人が利用するローカルで、生活感あふれる商店街が好きだ。あの雰囲気がいい。
しかしながら、テレビでは商店街のいろんな美味しいお店とかを紹介しているのに、CMは健康食品、ダイエットサプリばかりだった。何となく気分が萎える。
CMも変わってきたな。以前はもっといろんなCMがあったのに、今では健康美容系か保険系か、あるいはゲーム系とか、限定されてきて、昔のようなバラエティに富んだ感じがなくなったな。映画のCMとかも少なくなっているし、オーディオ系のCMなんて皆無になったな。なんとなく単調な感じがしてしまう。
自室に戻り、鞄を開ける。クレペリンの『強迫神経症』が出てきた。ああ、忘れていた。この本の後半には「精神病質性人格」の記述があって、それを読もうと思っていたのだ。昨日決めたことなのに忘れている。
ちなみにその記述は、精神病の範疇に入りきらない症状に関するものであり、現在の「人格障害」に該当する部分である。クレペリンがどういうふうにそれを記述しているかを再確認しようと思っていたのだ。僕は精神医学の原点はクレペリンにあると考えているので、現在の病理を理解する際にはその原点の臨床記述から始めるのがいいと思う。原点においてどのように記述され、どのように分類されているかを知っておくと、現在の記述や分類の理解が随分助かるものである。
まあ、それはいいとして、今日もいろいろあった。その時々で、何かを体験している僕がある。僕の自我は絶えることなく体験に触れている。どんな小さな体験であれ、体験している自我があり、体験する僕という存在がある。無駄にしたら勿体ない。
(寺戸順司―高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー)