1月3日(火):キネマ館~『スネーキーモンキー蛇拳』
今日、映画に関していくつかユーチューブを検索していく中で、たまたまこれを見つけた。ジャッキー・チェン主演の映画だ。僕が小学生の頃に流行ったもので、当時は僕も夢中になった。懐かしいと思い、ついつい見てしまう。
ストーリーはシンプルなものだ。蛇拳の流派を根絶しようと企む流派がいて、この悪役たちが蛇拳流派の総帥を探しだして抹殺しようと企む。
この総帥みたいな人が「おじいちゃん」である。風来坊のようなその日暮らしの生活を送る年寄りである。家賃の滞納から家主たちに追い出されようとしていた。そこに通りかかったチェンが年寄りを助けるわけだ。そこからジャッキーとおじいちゃんの交流が始まる。
ジャッキーはというと、孤児で、ある道場に拾われ、その道場の雑役人兼殴られ役として生きている。道場の師範代は金儲け主義で、生徒を獲得するために策を弄するような男である。その目的のためにチェンをやられ役として利用する。落ち込むチェンにおじいちゃんがカンフーの手ほどきをするようになる。
あとは、おじいちゃんを狙う悪役たちとチェンとが戦っていくという展開である。そこに隣の道場との悶着なども絡んでくる。
ストーリーはシンプルであり、無駄がない。チェンがネコを飼っているというくだりも、おじいちゃんが熱いお茶が苦手だというエピソードも、後の伏線になっている。女性がまったく登場しないのも特徴的だが、これも余分なエピソードを交えないためなのかもしれない。
そして、シンプルで無駄を省きまくったストーリーだからこそというか、カンフーシーンがやたらと多い。作品の7割以上はカンフーシーンじゃないかと思えるほどだ。決して誇張ではない。
個々のカンフーシーンはそれぞれ面白いと思う。子供のころは気にならなかったけれど、この年になるとさすがに多すぎると思ってしまう。「また、戦うんかいな」などと思ってしまったりする、それでも、みんなよくあれだけ体が動くものだなと感心してしまう。
それでも、一番の見どころはネコとヘビの格闘シーンかもしれない。ネコが一番強いかも。
俳優さんたちに目を向けよう。
ジャッキー・チェンが若い。一番にそれが目についた。
おじいちゃん役は酔拳などにも登場する人だ。今見ると、この作品には欠かせないキャラだ。けっこう殺伐としたストーリーと、大部分がカンフーシーンという本作において、ホッとするようなキャラだ。画面に登場するだけでホッコリしてしまう。
あと、おデブの坊ちゃんはサモハンキンポーだろうか。
師範代役の人は当時いろんな映画に出ていた人だ。他のジャッキー映画にも出ていたように思うし、ミスターブーやデブゴンにも出ていた人である。本作では金儲け主義のケチな師範代役である。全国チャンピオンが道場破りに来た理由が祝儀を出さなかったからというのが妙にハマった。いい感じのケチさを感じてしまった。この人は相変わらずいい味を出していて、どこか憎めないキャラだ。
さて、本作は子供が夢中になるのも理解できるように思う。
弱かったチェンが強くなること、強くなって流派の根絶を救うというテーマは子供には魅力的なのではないかと思う。
僕が思うに、子供は自分たちが絶えることに対する恐怖感を持っていると思う。それは子供には意識されないことだけれど、自分たちのルーツであるとか、続いてきたことが途絶えるとか、そういうことに関しての恐怖感があると思うわけだ。両親が離婚して、家族がバラバラになることがどうして子供心に大きな痕跡を残すかというと、その無意識にある恐怖心が刺激されてしまうからではないかと僕は思う。そして、そういう経験をした大部分の子供は、家族の途絶を自分では食い止めることができないわけだ。だから、本作は、大人よりも、子供の方が感動するのではないかと思う。
また、作品の中でジャッキーは象徴的に子供役なのである。弱く、無力で、上の言うことに逆らえない立場の人間として登場する。兄弟とか同胞も必ずしも味方とは言えないのである。ネコを飼うというのも、他の人間よりも動物の方に親近感を覚えるためかもしれないが、これも子供の心性であると思う。要するに、子供が同一視しやすい設定になっているように僕は思った。
そして、おじいちゃんである。このおじいちゃんは、親というよりも、そのままおじいちゃんの地位である。おじいちゃんとチェンの関係性は、親と子の関係性よりも、むしろ祖父と孫の関係性に近いように思う。この関係性が本作において安心感をもたらす要素となっているように僕は思う。
さて、ジャッキー・チェンはこのころが一番いい。70年代から80年代ころだ。80年代の中ごろ以降、だんだんアクションが派手になり、大がかりになっていく。カンフーシーンも団体戦のような様相を帯びたりする。本作のように、ほとんどの格闘シーンが一対一というのは、派手さには欠けるかもしれないけれど、僕にはちょうどいい。人が何人も戦闘シーンに登場すると忙しくてたまらんのだ。
本作は、今見ても面白い。十分に楽しめた。でも、昔は映画のジャッキーに同一視していた子供も、今はすっかりオヤジになって、おじいちゃんに憧れるというありさまだ。僕も歳を取った。ああいうおじいちゃんになりたいなどと思いながら鑑賞したよ。
(寺戸順司-高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー)