1月29日(日):女性友達に捧げる(22)
過去に女性と交際したことはある。僕はどちらかというと、淡泊な付き合い方をするようだ。週に一回でも会えれば、そんなに毎日会わなくてもいいと考えてしまうのだ。しつこく付きまとうような交際はした覚えがない。
それがなぜ、女性友達との交際ではあのような執拗さを示してしまったのだろう。僕はそこが不思議なのである。それを何とか追及したいと思って、こうして思い出を書き綴ってみたのだけど、どうもはっきり分からないままである。
恐らく、僕の方が、彼女の対人作戦に巻き込まれたのだろうということは察している。でも、それがいつ巻き込まれたのかとなると、どうも今一つはっきりしないのである。交際を始めた最初の日に、すでにその萌芽はあったと感じている。
その後、彼女の方が頻繁に僕を訪れ、連絡をくれるようになった。彼女がそういうことをしてくれるのが僕にはとても嬉しかったのを覚えている。いつしか毎日接触するようになり、どんどん彼女に惹かれていった。そのうち、今日も彼女が来てくれるだろうかと期待するようになった。この頃には完全に僕は巻き込まれていたと思う。大体、去年の一月半ばくらいだ。
初めて彼女に怒りを感じたのは一月の末だった。僕たちはその日、会う約束をしていた。彼女は仕事があったので、それが終わってからという約束だった。それは構わない。大体何時頃にその仕事が終わるのかを僕は聞いておいた。仕事が終わり次第、僕の所へ連絡をくれるということになっていた。
しかし、当日、その時間が過ぎても、彼女からは連絡がなく、僕は心配になってきた。20分や30分遅れたとしても、心配しているだけで、何とか持ちこたえていた。それが一時間を超えると、一体どうなっているのだとか、彼女に何かあったのではないかと、だんだん居ても立ってもいられないような気持ちになってきた。更に時間が過ぎても、相変わらず彼女からは連絡がない。こちらから連絡してもつながらない。一言「遅くなる」とでも連絡をくれていたら僕の気持ちも多少は鎮まっただろうとは思う。その時、僕は彼女が信じられないという気持ちに襲われていった。
僕はイライラしながら待った。最後には怒りになっていた。この怒りは、何というのか、自分が裏切られたような怒りだったように覚えている。僕は初めて、彼女はアテにならないと考えてしまった。
その日、もう彼女のことを諦めようかと思い始めた頃に、非常にタイミングよく、彼女から電話がかかってきた。仕事で遅くなって、今からでも会おうと言ってくれたのだ。僕はすごく嬉しかった。そして、あれだけ怒りに燃えていた自分が恥ずかしく思えてきて、彼女に対して申し訳ないような気持ちに襲われた。そして、約束の時間をかなり過ぎてしまっていたけれど、彼女を許してあげなければと決心した。そして、もちろん僕が怒りに駆られていたことなどは彼女に知られないようにしなければいけないと思った。でも、実際に会うと、それまでのことなんか水に流せるように感じられて、現実にそれができたのである。
怒った方が良かったのかもしれない。僕がどんな思いで待っていたかを、その時に知ってもらっておいた方が良かったかもしれない。今にしてそう思う。
観点が逸れてしまったようだ。とにかく、その日までには、僕は彼女にすっかり魅入られてしまい、彼女から離れられなくなっている自分を体験していたのだ。
(寺戸順司-高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー)