1月2日(木):「無言電話を待つ夢」
<夢>
仕事帰り。僕は一人の女性同僚と一緒に帰る。彼女は僕の部屋まで来る。お喋りをして過ごす。彼女は、僕が独断で決めるということで上の人たちが怒っていると言った。それに対して、僕はペン一本買うのにも上司の許可を求めんといかんのかと、そんなのやってられないなと言い返した。僕の出勤の時間が近づいている。電話が鳴る。彼女が出る。少しの間話した後、彼女は電話を代わると言い、僕に受話器を渡した。僕は電話に出る。はっきりしない声だ。ちょっと待てと向こうが言うので、僕は受話器を持ったまま待つ。ところがいくら待っても相手は戻って来ず、無言の電話を手にしている。僕は時間が迫っているのを気にしている。彼女も、わたしもそろそろと言って、部屋を出た。僕は彼女を十分に見送りできないことで腹立たしい思いがした。電話の相手はまだ戻ってこない。僕は馬鹿らしくなって、電話を切る。予定が狂った。急いで、僕は出勤の準備をした。
相変わらず仕事に関した夢だ。最近はこの手の夢ばかり見る。予定が狂うとか、出勤の妨害をされるとか、そういうものが多い。
確かに、予定が狂ったり妨害されたりすることも現実には多々ある。そういうのは困る半面、そうしたアクシデントを愉しみ、期待している自分もある。予定を組んで、その予定通りにすんなり事が運ぶと、爽快である反面、どこか物足りないような気持ちが残るのも確かだ。
だから、僕は心のどこかで物事が完了してしまわないことを望んでいるのかもしれない。それを過ぎたことにしてしまうこと、流してしまうことが難しいという部分があるのかもしれない。
もう少し、そのことを推し進めて考えてみると、予定がすべてこなせたということは、次の新しいことを迎えるために必要なことだし、また、そうしなければいけない。つまり、前に進むこと、次の事に移ることに対しての恐れとか抵抗感が僕にはあるのかもしれない。
そう考えると、思い当たる節もある。いくつか次のことを始めたいと思うのだが、なかなか動き始めることができていない。次のことに移りたいという気持ちと、今の段階で停滞していたいという気持ちが相争っているよう。
妨害しているものは何か。この夢では女性同僚にもそういう役割が見られる。それに正体不明の電話の相手だ。この相手の正体が見えていないから、僕には対応のしようがないのだ。そこを明確にしなければいけないということかもしれない。明らかに言えることは、それはとにかく他者なのだ。誰かなのだ。特定の人かもしれないし、象徴的、集合的な観念としての人かもしれないけれど、今の僕の生活において、誰が僕の予定を狂わす働きをしているだろうか。でも、僕はその人が予定を狂わしているということを知っていないのかもしれない。あるいは、そのことが向こうから明らかになるのを僕は待っているだけなのかもしれない。
そうした態度を僕は改める必要があるのだろうと思う。そういうことを考えるきっかけとなった夢だった。
(寺戸順司―高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー)
(付記)
今まで姿を見せなかった何かとの関わりが始まっているのだろうか。あるいは、僕の中で僕に主張できない何かがあるのだろうか。不思議な夢だったのを覚えている。
(平成28年12月)