1月12日:ビバ!マカロニ~『ライジングスターの伝説』

1月12日(木):ビバ!マカロニ~『ライジングスターの伝説』

 

 マカロニウエスタンを観ようと思い立つ。本作をチョイスしたのは、あまり印象に残っていないからである。繰り返し鑑賞したような作品は後回しにして、一度しか見ていないといった作品から見直してみようと思う。

 本作は1986年公開とある。マカロニウエスタンの全盛は60年代中ごろから70年代初頭までである。以後も作品が作られるということは、かつての全盛時代を取り戻したいといった動機だけではなく、あるいは以前のように儲けたいとかいった動機だけでなく、映画製作者に西部劇好きがおるからだろうと僕は思っている。

 

 本作は、先住民アパッチ族の部族に育てられた白人が主人公だ。彼の母は山賊に襲われ、アパッチに助けられたのである。子を産むと母親は息を引き取る。生まれた子はシャイニング・スカイと名付けられ、首長の子として育てられることになった。

 時が流れ、シャイニングは立派な青年に育っている。もう一人の首長の子であるブラック・ウルフとは仲良しの兄弟となっていた。しかし、部族の美女ライジング・スターを巡って、兄弟間でいさかいが生じ、シャイニングは過って兄を死なしてしまう。

 部族から追放されたシャイニング。彼は白人の町へたどり着く。荒馬を乗りこなしたことから牧場主に雇われることになる。

 牧場主クリビンズは、先住民に子供を殺された経験があるにもかかわらず、平和を望み、先住民と共存していくことを望んでいる。先住民は野蛮であり、白人社会の繁栄のために抹殺しなければならないと主張する権力者や保安官のライダーと意見が対立する。

 保安官らは、周辺の先住民族の部落を襲い、部族を根絶やしにしていく。その事実を知ったシャイニングは彼らと闘う決意をする。かつての部落に戻るシャイニング。折しもライダーたちの襲撃を受けている最中であった。白人たちを追い返し、ライジング・スターとの再会も果たすシャイニング。

 一方、敗退したライダーたちはシャイニングへの敵対心をさらに高め、シャイニングを必ず殺すと誓う。

 

 僕がストーリーを書くと何のことやらわからんなどと思われそうだ。上記のようなストーリーである。先住民への迫害を、先住民側から描いているところがいい。アメリカ風の正義は否定される。

 平和に暮らしている部族が、言われもない偏見によって虐殺されていくさまは非道である。マカロニらしい残酷さであって、女も子供も関係なく殺されてしまう痛々しさである。

 悪役がそこまで非情であるから、主人公が悪役を倒すところに爽快感を覚えるものであるが、本作はちょっとそういう感じではないな。ハッピーエンドで終わらないのである。こういうエンディングは、例えば70年代ころのニューシネマの時代だったらウケていたかもしれないんだけれど、80年代ではちょっと客に難色を示されるのではないかと言う気もする。

 また、個人的感想だけれど、ストーリー展開はいいのであるが、後半にちょっとダレ気味となる。すんなり勝負をつけてほしいところとか、速やかに次の展開に移ってくれたらいいのになどと思う箇所もいくつかある。その辺り、僕の中では、秀作とならず、佳作くらいの評価になっている。

 

 シャイニング・スターを演じるのはセバスチャン・ハリソン。いくつかのマカロニにも出演したリチャード・ハリソンの息子だということだが、こんな美形の息子がいるとは七不思議のひとつだ。

 ライジング・スターを演じるのはローラ・フォルネル。80年代のジャッキー・チェン映画のいくつかにも出ていたそうだ。

 部族の首長ホワイト・ベアを演じるのはホセ・カナレハスだ。山上たつひこの漫画に出てくるような、ちょっと下膨れ気味のお顔が印象的な俳優さんだ。この人も脇役でたくさんのマカロニに出ている人だ。

 保安官ライダー演じるのはチャーリー・ブラヴォー。やはりいくつかのマカロニ作品でお目にかかる人だ。

 牧場主クリビンスをルチアーノ・ビゴッツィが演じる。この人もマカロニでは脇役でお目にかかる俳優さんだ。年を取ってオーソン・ウエルズに似てきたな。

 こうして見ると、若手俳優さんの周囲を往年のマカロニ俳優(僕が勝手にそう決めている)が固めている感じだ。公開当時に本作を観た人は懐かしい顔ぶれに感激したかもしれないな。

 

 さて本作初見時今一つ感想を持っていたけど、改めて鑑賞しなおすとそれほど悪くもないという気がしている先述のような難点あるけれど、見て損はない。それなりに面白く鑑賞できる。まあ、三つ星半くらいか。

 

(寺戸順司-高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー)

 

 

 

 

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