9月9日:キネマ館~『シシリアン』

9月9日(木):キネマ館~『シシリアン』

 

 ジャン・ギャバン、アラン・ドロン、リノ・ベンチュラのフランス三大スター共演の一作。

 サルテ(アラン・ドロン)は宝石店強盗並びに警官殺しで拘留中の身。マナレーゼ一家の息子たちの協力を得て護送中に逃走。追う刑事(リノ・ベンチュラ)は、どちらかと言えば警官殺しの廉でサルテを執拗に追う。

 シシリー島出身のマナレーゼ一家は、表向きはゲーム機の製造販売業者であるが、裏はれっきとしたマフィアである。サルテは大仕事をマナレーゼ(ジャン・ギャバン)に持ち込んで、それと引き換えに逃走できたのである。

 現在、博物館では宝石展覧会が開かれている。サルテは拘留中にこの博物館の警報装置を設置した技師と知り合い、その情報を得て、マナレーゼに強盗の話を持ち掛けたわけである。

 しかし、この博物館の警報システムは一切の隙がないことが分かる。展覧会は次はアメリカで開催される。フランスからアメリカへ宝石類が輸送されることになる。そこで彼らは輸送の飛行機をハイジャックして、そこで宝石を盗み出すという計画を立てる。

 この強奪作戦とその後の展開が物語のメインである。サルテを追う刑事の調査、さらには不測の事態の処理と、彼らの計画が成功するのかどうかがサスペンスフルに描かれている。ミステリとして十分面白いストーリーだ。

 

 もう一つ、物語の柱として血縁ということが挙げられそうだ。ギャバンはシシリー島をすべて買い占めようという無謀な計画を立てている。この計画のために息子たちでさえ犠牲にするのだ。

 また、ドロンには妹がいるという設定だ。妹は兄を心配するが、この兄は自分の計画のために妹とも絶縁する。

 血は水より濃いというが、そんなに濃いわけでもないようだ。血縁者を犠牲にする辺り、この作品が持つ非情感を際立たせているようにも僕は感じた。

 

 あと、三大スターであるが、ジャン・ギャバンは重鎮という感じだ。貫禄がハンパじゃない感じを受けたのは僕だけだろうか。

 刑事役のリノ・ベンチュラもいい。おそらく警官殺しのサルテを拘留してからだろう、彼は禁煙しているのである。それでも口寂しさを紛らわせるためにタバコを口に咥えている。部下が気を利かして火をつけようとするとキッと睨みつけるあたり、なかなかユーモラスだ。サルテを逃してしまったと分かった時、ついにタバコに火をつけるのだけれど、あの後ろ姿はなんとも哀愁を感じる。

 アラン・ドロンは、有名な二枚目俳優である。実は僕の中では微妙な感じがある。すごくハンサムに見える時と、さほどではないと思う時とがあるのだ。こんなことを言うとファンの人からお叱りを受けるかもしれないけれど、僕の個人的印象ということなので御容赦願いたい。

 アラン・ドロンは「逃走」シーンがよく似合う。敵と戦うシーンよりも、敵から逃げるシーンのドロンの方がカッコよく見える。本作でも、女とよろしくやっているところ(ちなみにサルテは女好きという設定のようだ)を警察に踏み込まれた時に、窓から隣ビルに飛び込んで、階段を掛け降りて逃げるシーンがあるんだけれど、本作でドロンが一番カッコいい場面だ。

 ちなみに、ラストでギャバンと対峙するシーンがあるが、ああやって敵というか大物のボスというか、そういう相手と対決したり決闘したりするシーンのドロンは今一つだという感じがする。あくまでも僕の個人的印象だ。ドロンには、アメリカ映画に登場するようなタフガイは似合わないのだが、そこがドロンの魅力でもあるように思う。

 

 三大スター俳優の共演というところがウリでもある作品だ。ドロンもいいけれど、僕はリノ・ベンチュラに一票を投じたい。

 さて、本作の唯我独断的評価は4つ星だ。いい映画だと思う

 

(寺戸順司-高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー)

 

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