9月30日(火):今月読んだ本より
そう言えば、今日で9月も終わりか。今月も本をよく読んだ。
本が増えすぎて、一部処分しようと考えているのだけれど、処分する前にもう一度だけ目を通しておこうといった本もあるし、必要があって読む専門書や趣味で読む小説なんかもある。11,2冊読んだんじゃないかな。
印象深かったのは、カミュの『ペスト』だった。これは再読だ。ある日、ペストが蔓延して市が閉鎖される。そこからペストが終焉し、市が再び解放されるまでの約一年間の人々の姿が、リウー医師ら複数の人物を中心にして描かれている。状況に翻弄されながら生を選んでいく人たちの姿が良かった。
推理小説関係では、甲賀三郎の『妖魔の哄笑』が良かった。
推理小説というのは、ある程度お決まりのトリックパターンがある。一人二役とか二人一役とか、アリバイ崩しの王道的パターンとか、隠し場所トリックだとかいろいろある。新しいトリックというのはほとんど生まれることがなく、大抵はこれらのパターンをいかに組み合わせるかにかかっている。面白い推理小説はその組み合わせが絶妙なわけだ。本作はとにかく人物が入り組んでいて、先述の一人二役パターンや二人一役パターンが縦横に駆使されていて面白い。「あの時代」の推理小説を堪能できる一作だ。
また、ハリイ・ケメルマン『金曜日ラビは寝坊した』も印象深かった。1964年の作品で古臭さは感じられるものの、大胆にもヴァン・ダインの推理小説の原則を破っているところが好感が持てる。
その他、ジョン・ディクスン・カーとフレドリック・ブラウンの短編集、メリメの短編集など、短編をメインに読んだ週があったな。小説は短編に限ると僕は常々思っている。
専門書関係では、ジェイコブソンの『うつ病の精神分析』とクラウスの『躁うつ病と対人行動』を中心に、うつ病関係の本や論文をよく読んだな。精神医学では分裂病とうつ病の鑑別診断ということがよく取り上げられていたりするのだけれど、ジェイコブソンの同書は、少しややこしいけど、分裂病性のうつ病やうつ病性の分裂病との差異をも示してくれている点、すごく勉強になる。事例を挙げてくれるなど実用的である。クラウスの方は実存的な分析がなされていて、一部難解ではあるが、とても勉強になった。
僕も物事をしっかり考えることのできる人間になりたいと思う。プラス思考とかマイナス思考とか言って自己欺瞞に陥るより、現象学的に対象に迫り、自分自身の考えを持ち、あまりに独善的にならないように理論でその裏付けや根拠を固める。何事について考える時にもそのようにできればいいなと思っている。
(寺戸順司―高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー)
(付記)
具合が悪かったり、不調だったりした割には、けっこうたくさん読んだ月だったかもしれない。クライアントの急な変更とかキャンセルで時間が空いたおかげもあるだろう。その代り、ブログの方は疎かになったようだが。
(平成29年2月)