9月28日:良書と巡り合う 

9月28日(月):良書と巡り合う 

 

 今日は朝から絶不調だった。お腹の具合はよろしくないし、なんかフラフラする。仕事があるのでなんとか職場まで体を持ってきたものの、予定以外の時間はすべて横になって休んだ。 

 横になって休んでいるけど、それでも何か読むものをと思い、あまり負担の大きくないものを選ぶ。『ライヒ for biginners』を読む。横になる度に続きを読む。いつしか、最後まで読み切ってしまう。このシリーズ、大半がイラストであり、文章の部分が少ないのだ。イラストだけ見ても楽しめるのだけれど、イラストを見るとどうしても周辺の文字も読むことになるので、けっこう上手いやり方だなと思っている。 

 それにしても、ライヒはある意味でやはり天才だったなと思う。フロイトの門下生で、『性格分析』はその方面の傑作だと僕は思っている。しかし、ライヒは自分の理論をさらに飛躍させて、政治活動に身を入れるようになる。その辺りまでは僕も知っているのだけれど、それ以後のこと、オルゴン療法の開発とその後の発展に関しては、詳しいことを知らなかった。この本はライヒの最後まで説明されているので、よく分かる。もっとも、ライヒという人に興味を覚える人だけにとって役立つ資料だが。 

 ライヒは、クライアントの話の内容分析よりも先に抵抗分析をするべきだと、精神分析の世界では常識になっている事柄を初めて打ち立てた人である。その主張は『性格分析』にてなされているのだけれど、これはこれで素晴らしい本である。 

 精神分析から始めて、神経症治療に携わり、結局、ライヒが目指したのは、個々人の治療ではなくて、治療を必要としない社会をつくることという広大な計画だった。発想は素晴らしい。僕も賛同したい気持ちだ。ただ、そのために拠り所としたものが性領域に関する事柄であり、さらに誇大妄想的な計画だったのは、とても残念な思いがする。 

 さて、夕方ころには体調がだいぶん回復してきた。最後の仕事をこなし、夜は喫茶店にて本を読んで過ごす。 

 土日は読む時間がなかったけれど、モーム「魔術師」の続きを読む。さらに、クラインの論文を5つ読む。5つと言っても、そのうち2つは数ページの短いものだったが。 

 恥ずかしながら、クラインの著作を読むのはこれが初めてだ。フェアバーンやウィニコットを通して間接的に学んでいるし、概説書で勉強したことはあるけれど、実際の著述を読むのは初めてだった。有名なアンナ・フロイトとの論争で、僕はアンナ・フロイトに賛同するところが多かった。それもあってクラインを敬遠していたところもあったのだろう。予備知識があったから、一般に難解と言われるクライン理論もそれほど難なく読みこなすことができた。個人的な感想は、クラインの論文はそれ自体とても面白いと感じたということだ。 

 いやあ、いい本に巡り合ったなあ。ライヒに関する本もそうだし、モームにクライン、どれも良さそうだ。良書に巡り合う、これこそ一番の幸福だと僕は感じている。 

(寺戸順司―高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー) 

 

 

 

 

 

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