8月6日:メダルを噛むなー搾取論

8月6日(金):メダルを噛むな-搾取論

 

 名古屋の河村市長が金メダルにかじりついたらしい。実際、僕もその時の映像をニュース番組で見たのだけれど、ありゃひどい。案の定、ネットなんかで非難轟々となっており、そのいくつかが僕の目にもとまっている。不思議なことに、あれがパワハラであること、搾取であることを評している人がいないのだ。

 

 女子ソフトボールの選手だったと思う。金メダルを獲得して、市長が祝辞を送るわけだ。それはまあいいとしよう。市長が金メダルを見ることも良しとしよう。

 メダリストがメダルを市長の首にかける。僕は個人的にはこれはNGであると思っている。市長は辞退するべきだったと思っている。「これはあなたが努力して獲得したメダルなのだから、大切にしまっておいて下さい」などと言って、辞退する方が良かったと僕は思っている。

 でも、百歩譲って、それも良しとしよう。市長の方から要求したわけではなく、選手の方からそれをしたという一面があるからである。

 市長はメダルを首から下げ、それでまあ記念撮影でもして、そのままメダルを選手にお返しすれば良しである。なんで噛むかね。

 メダリストがそういうパフォーマンスをすることがある。僕はあんまり好きではない。メダルを掲げてニッコリ笑うくらいでいいのに、なんで噛むかね。しかも、メダリストは本当には噛んでいないのである。噛む真似をしているか、せいぜい軽く歯が当たる程度のものだと思う。河村市長はしっかり噛みついているのが分かるので、非常に品のないパフォーマンスとなっている。オッサンが串カツにかぶりつくようにして噛んでいるので、本当に品がない。

 メダリストが自分のメダルでそうしたパフォーマンスをやる分にはいいとしよう。僕は好きではなくても、その人が自分で獲得したメダルなので、それをどう扱おうとその人の自由である。市長の場合、人のメダルでそれをしたから不快感が倍増するのだ。

 これは人の所有物を私物化した形になるわけだ。人の成果を私物化したことになるわけだ。しかも立場的に上位の者が下位の者に対してそういうことを行うのだ。だから、これはパワハラの構図になると僕は思うわけだ。しかも、ある意味でそれを私物化しているということになるのだから、それは搾取的な行為であると言えると思うのだ。

 

 東京五輪が醜いのは、この種の搾取が至る所で散見されるからである。昨日のブログで書いた開会式のMIKIKOさんの演出も搾取なのである。パクりや盗用と表現されるけれど、そこに見られるのは搾取であると僕は思う。

 至る所にパワハラと搾取が見えるのは僕だけだろうか。

 

 搾取のもっとも典型なのが「中抜き」というやつである。本来、立場的に下の人が受け取るはずであった報酬を中間の者が搾取しているのである。搾取された側はやる気がなくなるかもしれない。結局、自分たちがどれだけ頑張っても、中間の連中が儲かるだけというのではモチベーションも下がることだろう。

 選手や関係者を送迎する運転手が用いているアプリもひどい代物だと聞いている。アプリの案内に従って運転したら、全然別の会場に辿り着いたなんてことを聞いた。特製のアプリなんか使わずに、普通のカーナビで良かったんじゃないかと思う。そして、運転手たちは紙の地図でルートを調べて運転しているそうだ。このアプリ開発費用に関しても中抜きがあったのではないかと僕は睨んでいる。

 

 昨日は東京の感染者数が5000人を超えた。全国では15000人の大台に乗った。この状況で五輪なんて大会を続行している日本は異常である。

 冒頭の河村市長はこう言うべきだったと思う。「金メダル獲得おめでとう。今はコロナ禍でもあり、あまり大きな声でお祝いできないことを残念に思います。コロナが収束したら、その時は盛大に祝賀会を開きましょう」と。メダルを目の前にしてはしゃぐより、ましてやメダルに噛みつくより、この方がはるかに「正常」な応対だと僕は思っているのだけれど、いかがなものだろうか。

 

(寺戸順司-高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー)

 

 

 

 

 

 

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