8月23日:喫煙欲求 

8月23日喫煙欲求 

 

 夜勤。0時から6時まで。もはや目指すものもなく、追い求めるものもない夜勤。ただただ辛いばかりである。作業をこなしているだけという感じである。流れ作業的にこれをやって、次はあれをやって、その次は・・・と、それを延々やっているだけ。僕の主体性などどこにもない。決められたことを、順番にこなしているだけという労働だ。実に下らない。 

 夜勤の間も、考えることは本業のことばかりである。作業しながら、他の事を考えている。原稿のあの箇所はどのような表現がいいかなとか、サイトに載せるテーマを頭の中で組み立てたりして、手だけは仕事をしているという感じだ。 

 パートのおばさんたちからもゴチャゴチャ言われることもあるけれど、どの言葉も僕には雑音でしかない。意味のある言葉として耳に入っていないのだ。いや、言っていることの意味はわかるけれど、それが僕にはなんの価値も意味もないものなんだ。一応、お店だ。商売をやってるわけだ。ところが、パートや社員さんの言う言葉はどれも内部のことばかりで、客のことを考えた発言や売り上げを伸ばすような提案などは皆無である。彼らにそれだけの力量がないのだ。彼らというのは、そのグループ全体のことである。それで、せいぜい立場的に下の者に対して、細かな指示を与えるということしかできないのだ。彼らが見ているのは下の人たちで、お客さんや利益は見ることができないでいるのだろう。だから、耳を傾ける価値なんてない。実際、まったく聴かずにいる僕が、特に問題になることなくやっていけているのだから、現実に無意味かつ無価値な言葉だったのだろう。 

 朝5時に手持ちのタバコがなくなる。そこから少し禁煙を試みる。これは今日始めることの意味が僕なりにある。明日と明後日は禁煙の条件がよろしいのだ。だから今日一日耐えれば、ほぼ自動的に三日の禁煙が達成できそうなのだ。まあ、そんなに単純ではないかもしれないけれど、明日や明後日はタバコが吸えない環境に身を置くことになることは確かだ。 

 

 夜勤を終えて、レンタルのDVDを返却に行く。二日延滞している。それはいい。そこの店に行くには、徒歩で片道30分はかかる。往復1時間だ。早朝とは言え、歩いていると汗だくになった。 

 DVDを返却する。その店は延滞料金が一定以上だと無料でレンタルできるというシステムがある。延滞の料金によって、それが1枚であったり、2枚であったりするのだけれど、なかなか上手いシステムだなと感心する。あんまり損をしたという感じが残らず、引き続きレンタルしてしまうのである。 

 お笑いと映画を借りる。これは無料だ。延滞料金からのサービスだ。それから帰途に着く。帰宅したのは8時頃。禁煙して3時間になる。ずっと外を歩いていて、喫煙欲求は感じなかった。 

 軽くパンをかじり、布団を敷く。寝転がって、借りてきたDVDを視聴する。途中、何度もうつらうつらしてしまう。ハッと目覚めて、うつらうつらし始めた部分まで巻き戻し、見直す。そんなことをしているので、2時間程度のお笑いDVDが全部見るのに4時間くらいかかり、1時間半程度の映画が2時間半くらいかかった。 

 

 15時頃、階下へ降りる。母が夕食の準備をしていた。今日はトンカツかと思い、僕が揚げる。両親の分を揚げ、最後に僕の分を揚げた。幾切れかに切って、皿に盛り付ける。自分の分を盛り付け、そのまま昼食とも夕食ともつかない食事に突入する。 

 食後、タバコが欲しくなるかと思いきや、案外そうでもなかった。今、16時なので、禁煙開始から11時間経過したことになる。今の所、喫煙欲求に襲われることなく来ている。 

 音楽を聴きながら、本を読む。いや、読むと言うより、何を読むかを選んでいた。ディック『高い城の男』を読み終えて、他のディック作品に行こうか、それともがらりと趣向を変えようかとで悩む。でも、もう少しディックを読むかと、フィリップ・K・ディック著『タイタンのゲームプレイヤー』を書架から引っ張り出す。 

 

 19時ごろ。禁煙開始から14時間だ。ものすごく喫煙欲求に襲われた。本当にタバコを買いに行こうかとしたくらいだ。幸いなことに外では雷が鳴りだし、そのうち雨が降り始めた。雨は徐々に激しさを増し、それで僕は外出する気を失くした。 

 20時。15時間経過。雨が止んできた。よくない兆しだ。なんとか朝までは禁煙を続けたい。24時間は達成したい。今、とても強い喫煙欲求に襲われ続けている。こういう時に何かがあれば良い。何かというのは、タバコや喫煙欲求よりも強くて、それらを遠ざけてくれるような物や行動だ。こうして文章を書くというのも、僕の場合にはいいかもしれない。読むのもいいかもしれない。特に音読するのは喉の回復をも実感できていいかもしれない。 

 キャンディやガムを口にするとかいう人もあるが、僕はあれはダメだ。つまり、普段から、飴玉やガムが口に入っていようと、欲しくなったらタバコを吸っているからだ。口に物が入っていても吸う癖がついているのだ。 

 21時。16時間経過。この一時間、そわそわして、やたらと飲食している。タバコが欲しいと体が欲している感じだ。 

 何かテレビでも観ようかと思ったが、これといって見たいと思うような番組もない。助けになってくれそうなものが何もない感じがする。明日は朝が早いので、今日はもうこの辺りで寝てしまおうと考えている。昨夜は昨夜で徹夜しており、しかも今日はまとまった睡眠を採っていない。これは熟睡できそうだ。 

 

(寺戸順司-高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー 

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