8月21日(土):キネマ館~『女番長 野良猫ロック』
ついにここで本作を取り上げることになったか。野良猫ロックシリーズの一作目で、和田アキ子さんが大暴れする痛快作だ。
(scene1)オープニング
どこからかバイクでやって来たアッコさん。信号待ちしていると後ろから衝突してくるジープが。アッコさんに衝突するチャレンジャーは青雄会の面々だ。この面々と後に対決する予感がここで生まれる。この時、土曜日の朝。
アッコさんが20歳頃だ。背が高く、スリムでスタイルも良く、カッコいいぞ。ただ、若いころのアッコさんはちょっとオバサン顔なところもある。
バイクを疾走させるアッコさん。オープニングタイトルが始まる。ボーカルはアッコさんだ。なかなかカッコいい曲である。
(scene2)メイたちと仲間入り、そして仲間の救出
ガソリンスタンド。急いでいるから乗せてくれとアッコさんのバイクに跨るメイ。姉御はだのアッコさんは、最初はからかうものも、気前よく乗せてやる。
メイが到着するとすでにスケ番グループが集まっている。メイたちのグループと敵対しているスケ番グループとの対決が始まる。そこに先ほどの青雄会の面々が助っ人に入る。メイたちが不利になるところ、アッコさんが乱入して暴れる。
アッコさんはメイたちのグループに入るともなく入るのだが、仲間の一人が青雄会につかまったという知らせが入る。相手が青雄会ということでメイは二の足を踏むが、仲間を助けにいこうとしないメイを「見損なった」と言い切るアッコさん。この言葉にメイの決心が固まる。アッコさんの一声で人が動く最初のシーンだ。
青雄会のアジトに乱入して、リンチにあっている仲間を救出する。
(scene3)ミチオの拉致と救出
一方、メイの恋人であるミチオは今の自堕落な生活に耐えられず、男として一旗揚げようと決起し、メイの反対を押し切ってまでして、青雄会に入会する。
青雄会入会の条件として、ミチオは幼馴染のボクサーであるケニーに八百長を働かせることを約束する。ケニーは親友のために今夜の試合は負けてやることを約束する。
ケニーの試合を観戦しにきたアッコさんたち。ケニーがあっけなくダウンする姿に業を煮やしたアッコさんは、カメラマンを押しのけてリングサイドからカツを入れる。こんな負け方して、「恥知らず」と叫ぶ。アッコさんの一声で人が動く二番目のシーンだ。立ち上がったケニーは瞬く間に相手をノックダウンする。
ミチオは青雄会を裏切ったとされ、拉致され、リンチされてしまう。アッコさんとメイたちは青雄会の隠れ家に行き、大暴れして、ミチオを救い出す。
(scene4)逃走と籠城
上手くミチオを救出したが、メンツを潰された青雄会は彼女たちをどこまでも追跡する。彼女たちはバラバラになって逃げることにし、アッコさんとメイ、ミチオはマリの案内する隠れ家に身を潜める。建築現場の詰所のような場所だ。
町に出たアッコさんとマリだが、マリは青雄会につかまり、リンチのすえに隠れ家を教えてしまう。翌朝、青雄会のバイク軍団がミチオたちの隠れ家に押し寄せる。もう逃げられない絶体絶命の場面だ。
勇ましく振る舞うアッコさんに、ミチオが「怖くないのか」と問う。アッコさんは怖いけどやるしかないんだといったことを答える。それを聞いて安心したと、ミチオは立ち上がり、独りで青雄会に立ち向かおうとする。アッコさんの一声で人が動く第三の場面だ。
だが、ミチオは青雄会の幹部原田の銃弾に倒れてしまう。アッコさんはメイをバイクに乗せて逃走を図る。青雄会のバイク軍団も後を追う。
ここからはバイクチェイスのシーンだ。アッコさんのドライビングテクに青雄会の連中はついていけない。唯一、カツヤのバギーカーだけが執拗にアッコさんを追う。地下街であろうと、歩道橋であろうと、公園であろうと、交通法規なんて無視しまくりの追跡劇が展開するも、バギーカーもまたアッコさんの運転テクの敵ではなかった。バギーカーはオシャカになり、敵を逃しても、高らかに笑うカツヤ。感情がおかしいヤツだ。
アッコさんとメイは、彼女たちがいつもつるんでいるライブハウスに戻りみんなと合流できたが、この店を青雄会の連中が押さえてしまう。連中は出入り口を固めてしまう。もはや入ることも出ることもできず籠城状態に追い込まれる。
重苦しい空気の中、店内に座り込む客たち。ここにさりげなく井上陽水。おもむろにギターを抱えると独り歌い始める。陽水、ちょっとカッコいいぜ、と思ってしまうシーンだ。
(scene5)最後の決戦
アッコさんはトイレに行くといってコッソリ裏口から外に出る。なんとなく察したメイはアッコさんに続いて外に出る。二人が向かったのは青雄会の事務所だ。
事務所では原田とカツヤとの間で諍いが起きていた。怒りに駆られて原田はカツヤを射殺する。そこにアッコさんが踏み込んでナイフ片手に構える。
私にやらせろと、メイが買って出る。原田は恋人のミチオを殺した憎い相手である。メイは原田を刺し、自らも命を失う。メイたちのグループと青雄会の抗争はここで幕を閉じることになる。
(scene6)エンディング
バイクにまたがり、再び当てのない旅に出るアッコさん。この時、月曜日の朝。土曜の朝からの48時間の物語である。
アッコさんを見送った二人の仲間。彼女たちは手をつないで歩く。その向こうには建築中の高層ビルが見える。メインテーマ曲がスキャットで歌われる。「デュ、デュビデュ、デュビ、デュビ、デュ・デュ、ビ・デュビデュワー」(なんのことやら分からんだろうなあ)と歌が流れる中でのこのエンディングシーンは印象に残る。
時代が変わろうとしているのだ。高層ビルはあちこちで建築中であり、建築現場や資材置き場が随所にある。舞台は新宿であるが、国道から少し入ると空き地が広がっているあたり、昔の面影を残しているものの、一方では高層ビルがニョキニョキと建築中なのである。「ここはアタイらの町だ、汚ねえ大人たちに勝手なことはさせねえ」といった任侠はもはや時代遅れになろうとしているのだ。時代の過渡期において、上手く生きられず、エネルギーを持てました若者たちの生きざまである。
と、まあ、好きな映画のことになるとやたらと饒舌になってしまうが、これくらいにしておこう。本当はまだまだ言い足りない。でも、読む人からすれば何のことやらわからんと思われるだろうから、これくらいで勘弁しておこう。
本作の僕の唯我独断的評価は断然5つ星だ。アッコさんが強い(多分実物はもっと強い)のも魅力だが、梶芽衣子さんや藤竜也さんなどのレギュラーがすでにそれぞれのキャラで活き活きしているのも魅力だ。
(寺戸順司-高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー)