8月14日:骨折してしまった 

8月14日(火)骨折してしまった 

 

 朝、家の中で忙しく立ち働いている時、家具に左足をぶつけてしまう。 

 ぶつけた瞬間、痛みを感じたが、それよりも力が抜けたようになって、その場にヘタヘタと頽れる。 

 痛みが激しい。母は打ち身とかねん挫とか、そういうものと見ていたようだ。でも、僕はそういう痛みとは違うということに気づいた。立つことができないのだ。体重がかかると激しく痛み出して、力が入らないのだ。 

 僕は心配なので、病院に行くことにした。父に車を出してもらおうかと思ったけれど、こういう時、父にそういう期待をする方が間違っていると僕は思ったので、タクシーを呼ぶ。 

 最初の病院では、医師が不在だからと言って断られる。代わりにそこよりも遠方の病院に回される。こちらから向こうには連絡してあるから受付で名前を言えばすぐに分かると言う。 

 タクシーを待つ。向こうの遠い方の病院に行く。受付で僕の名前を言う。まるで通じていない。僕はそこで一から説明しなければならなくなった。全然手配がきちんとされていないなと思いつつ。 

 各診察室には番号が付されていて、僕は5番の前で待っているように言われた。向こうの端から123と続いて3の次は56と続いている。4は縁起が悪いから抜けているのだけれど、123567の方が不自然で気持ち悪いと感じた。 

 整形外科の先生は温厚そうだが、でっぷり太った人だった。メタボなお腹をしてるなと思った。しかし、メタボくらいで人間の価値が決まるわけではないのだから、全然構わないのだが。 

 骨折の疑いがあるからということで、僕はレントゲン室へ行くように言われた。ちなみにレントゲン室は20番だった。5番から20番まで歩かせるのかよと内心腹を立てつつ、杖を突いてよたよた歩く。 

 20番前のベンチで一人腰かけている男がいる。明らかに患者ではない。何かの業者だ。そいつが入り口に近い所を占有している。そろそろ僕も頭に来ていたので、一つこいつにガーッと言ってやろうかとも思った。しかし、揉め事は懲り懲りだと思い、大人しくする。 

 僕の名前が呼ばれる。僕は立ち上がって、その男の前を迂回して、レントゲン室に入る。レントゲン技師は男性で髭を生やしていたが、あまり不快な印象を与えない人だ。2枚、撮影する。撮影が済んだら、再び5番で待ってくれと言われる。今度は20番から5番へと、杖を突いてヨタヨタ歩く。もう少し、この移動は何とかできんものかいなと思いながら。動く歩道でも真ん中に設置してくれたらいいのになどと思いつつ。 

 5番の前。名前が呼ばれる。レントゲン写真を見て、メタボ腹の先生が「折れてますね」と。僕も見させてもらう。素人目に見てもよく分かる。足の骨が写っていて、そこに一本きれいに筋が通っておるのだ。それがひびなのだ。 

 患部を固定して、松葉杖の練習をすることになった。リハビリ室に連れて行かれる。松葉杖を指導してくれるのは、まだ年の若い女性で、名札を見るとYさんだった。つまりYさんと同じ名前、同じ表記のYだったのだ。若い女性に体を支えて貰ったり、何となく照れくさいものがある。 

 リハビリを終える。店に電話をかけて今夜のシフトは入れないと伝えようとするが、つながらず。家に電話をかける。父が店まで行って伝えてくると言う。店の方は交代人員を手配しなければいけないから、早目に伝えないといけなかったので、そこは父にお願いする。 

 会計まで待たされる。タクシーを呼ぶ。そこでも待たされる。タクシーに乗る。渋滞でノロノロとしか動かない。父が行ってくれたとはいえ、僕も一応店に顔を出しておこうと思う。松葉杖をついた僕を見て、勤務していた人たちは驚いたようだ。 

 僕も恥ずかしい思いだった。無理を言って、休ませてもらう。ついでにタバコも買う。実はタバコを吸えなくて、しかも痛くて、非常に辛かったのだ。 

 帰宅する。家の中ではほふく前進状態で過ごす。骨折して、なんとも自分がやるせない。 

 

(寺戸順司-高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー 

 

  

 

 

 

 

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