7月3日:キネマ館~『野良猫ロック~マシンアニマル』

7月3日(土):キネマ館~『野良猫ロック~マシンアニマル』

 

 調子に乗ってまた「野良猫ロック」シリーズを取り上げる。これは4作目に当たる。

 舞台は港町・横浜。ここに3人の流れ者が現れる。ノボ、サブ、チャーリーだ。彼らはLSDの錠剤を金に換えて、日本から抜け出そうとしている。このLSDを巡って物語が展開していくことになる。

 女たちのグループは、最初は彼らからLSDを盗む。しかし、リーダー格のマヤはLSDを返し、3人に協力する。マヤはそれを買ってくれそうな人物に持ちかける。これがドラゴン組の佐倉である。佐倉は興味を覚えるが、ひょんなことからそのLSDが佐倉の手に渡ってしまう。マヤたちは佐倉からLSDを取り戻すも、佐倉たちの仕返しを受ける。こうしてやられたりやり返したりを展開している一方で、3人は国外逃亡の手はずを整えていくのだが、果たして彼らは外国船に乗って日本を脱出することができるのか。ただでさえチャーリーはベトナムからの脱走兵ということで警察に睨まれているのにである。

 

 物語自体は悪くない。目まぐるしく展開して、退屈することが無い。しかし、何て言うのか、緊迫感のなさ、脱力感もある。

 この脱力感の最たるものがクライマックスのバイクチェイスである。チャーリーを人質に奪った佐倉を追って、女たちがバイクで追うのだ。まず、ホンダの店に入り、バイクを試乗することにしたのだろうか、バイクに跨って店から出てくる。6人の女たちが縦一列に並んでバイクを走らせる。近回りするために、飲食店やパチンコ店なんかを突っ切る。それもユルい感じで。港の埠頭まで佐倉を追い詰める。逃げる佐倉。ここで6人が分散して佐倉を前後から挟み撃ちにする。佐倉は右折するが、そこは行き止まりで、敢え無く追跡劇は終わる。女たちはチャーリーを取り戻し、バイクをホンダのお店に返す。う~む、ユルすぎて最高だ。

 チャーリーは結局、警察に逮捕、連行されてしまう。最後まで佐倉たちが妨害するのだ。女たちは残された二人を船に乗せて、自分たちで戦おうとするが、この二人は自分たちの夢を捨て、彼女たちを助けに戻る。彼らが乗るはずだった船が出港しているのを見て、物語は終わる。ノボは新天地に向かって車を走らせる。哀愁漂うラストであるが、どうも今一つ感情移入できないのはなぜだろうか。夢が挫折するというシリーズパターンが定着してしまっているためだろうか。

 

 その他、見所としては、マヤたちが集まるバーで行われるライブである。当時の人気歌手やグループなどが登場する。彼らの映像が見れるのも楽しい。それに、サウンドトラックもビートが効いてて、ノリが良い。そう、本作は音楽がとてもいい。僕の好みに合う。

 

 マヤを演じるのは梶芽衣子さんだ。帽子姿は前作からだ。帽子姿は、よく似合ってるというか、雰囲気があってよろしい。

 ノボは、ノーボディのことで、誰でもないという意味の名前なのだそうだが、これを藤竜也さんが演じる。藤竜也さんもこのシリーズには全部出演しているのだけど、毎回、顔が変わる。役柄に応じて顔が変わっていく感じがする。優れた役者さんなんだと思う。

 サブを演じるのは岡崎二郎さんで、なんとなくノボのキャラと被るようなところが感じられて、今一つ印象に残らない感じが僕の中にある。

 佐倉を演じるのは郷鍈二さんだ。この人は宍戸錠さんの弟さんである。どうりで顔が似ていると思った。本作でもけっこうなインパクトが残るキャラだ。

 あと、佐倉が密かに思いを寄せている謎の美人に范分雀さんが扮する。佐倉が事故で怪我をさせてしまったという設定で、車椅子での登場である。バッハのオルガン曲を聴くのがお好きなのか、ミステリアスな雰囲気を漂わせており、なかなかいいですな。

 

 本作の唯我独断的評価は、まあ、3つ星半くらいかな。悪くはない。5作中の4作目ということもあって「野良猫ロック」シリーズのピークを過ぎた頃の作品という印象を受けてしまう。どことなく、最初の頃の勢いがなくなってきた感じがしてしまう。

 

(寺戸順司-高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー)

 

 

 

 

 

 

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