7月23日:悪夢の始まり

7月23日(金):悪夢の始まり

 

 今日、オリンピックとやらが開幕する。日本の終わりの始まりのような気分だ。

 無観客ということが決まっている。チケット収入はこれでゼロだ。海外からの観客も来ないので地元をはじめ、地域も地方も儲からない。スポンサー企業もCMを自粛するなんて話も出ているから、スポンサーでさえ利益が上がらない。

 潤うのは一部の関係者のみ。その他の国民に与えられるのは「感動」だけである。そんな感動は欲しくもないのに、一方的に与えられることになる。

 それだけの利益のために払った犠牲は大きい。この五輪に関係してどれだけの人が死んだことだろうか。それ以上に膨大な数の人が苦しい思いをしてきただろう。そこまでして開催するほどの大会かという気もする。

 完全な形で開催したかったのならコロナ感染をきちんとやっておくべきである。ワクチン接種率が人口の7割くらいあれば、海外からの観光客(ワクチンパスポートのある人に限られるが)を受け入れても構わないだろう。会場も有観客にできただろう。政府はもっとできることがあったはずである。

 僕は五輪反対派だ。廃止しても構わないと思っている。僕ほどでなくても、多くの人は今回の東京五輪を失敗してほしいとは思っていないだろう。コロナ感染対策の不備やさまざまな不正が許せないのであって、五輪そのものが憎いというわけではないだろう。それでもここまで反対派が生まれているのだから相当なものだ。

 政府にとっては自分の撒いた種なのだ。それを反日だと国民を批判しても、それは筋違いというものである。

 

 さて、オリンピック開会当日だというのに、僕の周りでは全然そんな気配も見えない。開会式を楽しみにしているという人も周囲には見当たらない。お祭りムードなど皆無であり、ごくごく普通の一日と変わらない感じだ。誰も五輪に期待なんかしていないのではないかとさえ思えてくる。

 3兆円かけて大赤字の大会を開催する。普通の企業なら倒産する話であり、当事者のクビが飛ぶような話だ。もしくは自殺レベルの損失だ。それでも彼らは五輪後も平然としていることだろう。尾身会長がこの状況でオリンピックは普通ならやらないと言っていたけれど、まさにその通りだ。「普通」ではないのだ。「普通」なのが誰もいないのだ。尾身会長は間接的に「異常だ」と言っているわけであり、僕はそれに賛同する。この国が異常なのだ。

 

 政府はこれまで五輪に向かってやってきたけれど、五輪後のことは何も明示していない。どういうビジョンを描いているのかまるで見えない。五輪後の社会はどうなるのか、どのような社会にしたいのか、何も僕たちには聞かされていない。経済は回復するのか、大赤字の補填の目途が立つのか、コロナ対策はどうなるのか、ワクチンは供給されるのか、宣言は解除されるのか、何一つ明確ではない。

 五輪後は国民が団結していると思うのか。その五輪が国民の分断を推進したのではないのか。この分断をどう修正していくつもりなのか。

 恐らく、五輪後には経済がガタガタになるだろう。大不況が到来するだろうと僕は思っている。オリンピックは平和の祭典どころか、悪夢である。今日がその悪夢の本当の始まりなのだ。

 

(寺戸順司-高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー)

 

 

 

 

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