7月15日:禁煙記

7月15日(火):禁煙記

 昨夜から禁煙を試みている。昨日の20時、職場を出る前に吸ったのが最後だった。今、15日の16時前。およそ20時間が経過しようとしている。この20時間を振り返ってみよう。

 まず、昨夜、職場を出て、いつもタバコを買うエリアを避け、そのまま歩く。歩いて水無瀬まで行った。そこから電車に乗り、帰宅。22時半頃だ。それから食事を軽く済まして、23時に布団にもぐりこむ。下手に活動しているとタバコが欲しくなるから、寝間着に着替えて、布団の中で大人しく本を読む。
 0時半頃までは記憶があるけれど、いつの間にか眠ってしまった。眠くなるまで読み続けようという作戦だった。そしてぐっすり眠ることで、そこで6時間なり8時間なりを稼ごうという計画だった。
 ところが、目覚めたのは3時だ。2時間半しか眠れていない。禁煙して神経が昂るのだろうか。すごく眠たいのに眠れない。仕方ないので、そのまま起き続けている。
 初めて喫煙欲求が生じた。下に降りて、間食する。それらもう一度布団に入る。ミステリ雑誌とコミックをどっさり持って。
 「マンハント」から短編をいくつか読む。アクションのある爽快な物語がいいなと感じていたからだ。ところが、あまり僕の感情とは合っていなかった。
 5時頃までは本を読んでいた。もう外は明るくなっていた。それからまた眠ってしまったようだ。起きたのは8時前だった。
 その時点で開始から12時間の経過だ。起きた時は喫煙欲求はなかった。その後、お昼の12時頃まで家で過ごす。あまり難しい本は手をつける気になれず、専門書も控えたい気分だった。推理小説を読もうと思う。クイーンに決める。本棚の、エラリー・クイーンの棚の前に立ち、目をつむって、最初に手にしたものを読むということにした。手にしたのは『ハートの4』という作品だ。今日一日、タバコではなく、この本を友としようと決める。
 家にいる間は喫煙の恐れはなかった。手持ちのタバコさえなければだけど。だから外に出る方が危ないわけだ。

 13時から14時(17~18時間目)。覚悟を決めて外に出る。先月の挑戦では18時間目でアウトだったから、今回は20時間を目標としている。高槻の職場に出る。14時頃になっていた。前回はこの辺りでアウトだったけれど、確かに、激しい喫煙欲求の波が襲っている。

 14時から15時(18~19時間目)。喫煙欲求を感じながら、とにかくパソコンでの作業をやっていく。無我夢中で作業していくのだけれど、パソコンの動きが鈍くなったり、動作が遅かったりすると、イライラする。
 15時から16時(19~20時間目)。喫煙欲求は相変わらず続いている。面接の予約が入った。定休日だけれど職場に来ておいて良かった。
 16時を過ぎた。一応、今回の目標時間は達成した。今、早速吸おうか、それとも記録を伸ばそうかで、すごく葛藤している。

(喫煙する)
 結局、タバコを買ってしまった。一服喫う。これが不思議なことに、あれほど喫煙欲求に襲われながら、実際に喫ってみると、それほど感慨深いものではない。さっき一本喫って、最初の1,2吹かし目辺りまでは良かったのに、それから先はもう感動も感激もない。味覚さえどうでもいいという状態だった。
 飲み屋でこの話をすると、みんな冗談だと思うのだけれど、僕にとってはけっこう真面目な話だ。僕は本当はタバコなんて吸いたくないのだ。本当はおっぱいが吸いたいのだ。でも、おっぱいがないので仕方なくタバコを吸っているのだ。
 精神分析的に言えば、このことは事実である。口唇期固着を残している人はどうしてもタバコとか飲酒の傾向を深めてしまう。僕もそうなのだろう。
 10代の頃、性への関心が一気に高ぶったあの頃、女性のおっぱいなんて嫌悪の対象だった。おっぱいのどこがいいのかと思っていた。女性は下半身が一番いいに決まっているなどと真剣に信じていた。
 それから、最初は飲酒だった。喫煙はけっこう遅かった。クリニック時代だから、僕が25歳頃じゃなかっただろうか。その頃には、女性のおっぱいへの嫌悪感は薄くなっていったように思う。
 それにしても、僕が喫煙を始めた頃から比べると、タバコのなんと値上がりしたことか。タバコは高くなる一方なのに、それならおっぱいを値下げせえと、そうでないと不公平だと思うのだが。ちなみにこの話、ここでみんなに笑われる。
 関西人の悪い癖で、話にオチをつけとかないといけないという強迫観念があるのか、そこが一応のオチだ。でも、僕としてはけっこう真面目な話題なのだ。僕の乳児期に、一体僕はどんなことを経験したのだろうか、僕にどういうことが起きたのだろうかと、いつも疑問を覚える。
 うーむ、タバコの話をするつもりが、いつの間にかおっぱいの話になってしまったな。この一貫性のなさも直さないといけないな。

(寺戸順司―高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー)

(付記)
 毎度のバカバカしい話をしているな。口唇期固着と言っても、飲酒やタバコだけとは限らない。お喋りとかキスとかも関係するのだが、そちらはあまり興味がない。どうやら、固着と言っても個人差はあるようだ。
(平成29年1月)

 

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