6月13日:6.13記念 

6月13日(火):6.13記念 

 

 6月13日だ。「6.13」だ。左膝を木端微塵に割ってから、ちょうど一年だ。僕の記念日にしよう。 

 一年前、こんな大けがをして、今後どうなるのだろうと心配していたのがウソのようである。ホントに、最悪の場合、仕事ができなくなるとまで思いつめたこともあった。 

 しかし、どうにかなるものである。もちろん、不便と苦労はあったものの、今もこうして仕事ができている。幸せなことだ。 

 

 さて、今日は定休日だ。書籍のことをやる。これは一年前にはなかった仕事だ。おまけに一年前には想像もできなかった仕事だ。 

 現在までに書き上げているところを昨日プリントアウトしておいた。今日は、それを読んで、修正箇所、校正チェックをする。今日の作業はほとんどそれだけだ。 

 しかし、本当に本が完成するのだろうか。読み返せば読み返すほど、修正箇所が出てくる。日々、完成に近づけているつもりではいるのだが、果たして終わりが来るのだろうか。 

 

 午後から高槻に出る。明日の準備をしておいて、久々にキーボードを引っ張り出して、弾く。一時間ほど弾いた。たまには音を出してやらないと、ダメになってしまう。 

 指は思っていたよりも動いた。これから毎日、短時間でも弾こうかと思う。もはや上達する目的も意味もないけど、指先を動かすことは良さそうだ。 

 

 昨夜、少しお酒を飲んだ。入院している人がいるので、その後の様態なんかも聞いた。順調に快復しているそうだ。何よりだ。いつかまたその人とも飲むことになるだろう。 

 飲み仲間でも仲のいい人はいいのだけど、そうでない人はキツイ。昨夜は本当に嫌気がさした。 

 酒飲みでもいろんなタイプがおるもので、ああいうグダグダタイプも好かんな。騒音タイプに次いで苦手だ。やたらと絡んでくる。絡んでくると言っても、これは別にケンカをふってくるというわけではなくて、話しかけてくるということだ。僕はもう無視していた。 

 僕もいずれはあんな風になるのだろうか。今、若い人が店で呑まないそうだ。分かる気がする。呑兵衛がだらしない姿を曝し過ぎるのだ。もっとカッコよく飲んでいたら、若い人にもアピールできるだろうに。 

 

 昨夜はそんな調子だったので、今日は早めに帰宅する。電車の中。周囲はスマフォばかりだ。 

 左隣の奴のを覗き込んでみる。なんかカードゲームみたいなのをやっておる。右隣の奴はRPGゲームっぽいのをやっておる。すぐ前で座ってる奴はバトルもののなんかをやっているようだ。ゲームばかりだ。ようやるわ。 

 僕も経営系のゲームをやっていた。けっこうな数の店舗を展開した。でも、いい加減、面倒臭くなってくる。先週までは、一日に一回くらいプレイして、蓄積されている利益でさらに店舗を増やした。それをまた一日置いておくわけだ。そうしてこれが日課のようになっていったのだけど、もう、どうでもいいやという気持ちになった。 

 あんなものに自分の時間を捧げるなんて馬鹿げている。時間潰しにはいいかもしれないけど、潰すだけの時間がない。本当に時間潰しっていうのは一つの罪だ。人生に対する裏切り行為かもしれない。 

 僕はもう御免こうむる。ゲームの中で金持ちになったかて、それがどうだというのだ。経営ゲームなんて言うけど、あんなの経営でも何でもない。何の苦労もなしに利益を上げてくれるのだ。その利益で新しい店舗を購入して、利益を増やすだけだ。経営感覚なんて不要である。少しは経営感覚が身につくかと思っていたが、とんでもない。無駄な時間を費やしただけだった。 

 みんな、ゲームに夢中になっているうちに人生が通り過ぎていくんだろう。人生が通り過ぎて行っていることさえ気づかないのだろう。気づいた時は後の祭りだ。人生でもっといろんなことができたかもしれないのに、そう思った時はもう手遅れなのだ。 

 

 僕も今までの人生で、たくさんの無為な時を過ごした。遠回りすることも多かったし、道草も多かった。もっとストレートに生きていれば良かった。右に左にと、フラフラしながらやってきた。今は後悔しかない。 

 今は、それを少しでも取り返したい、挽回したい気持ちでいる。 

 

(寺戸順司―高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー) 

 

 

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