5月22日(水):人間の退化
今朝までの深夜勤務はいつもより早く終わった。明け方頃には寝て、朝早く目覚めた。要するにあんまり寝ていないということなんだけれど、それでも朝8時には起きて、朝食をとっていた。
朝食時にテレビのワイドショーで「カスハラ」のことをやっていた。「カスハラ」ってなんだっけ、と一瞬思ったが、そうそう、客が店員に対してするハラスメントのことだと思い出した。
番組では実際のカスハラ映像が流れていた。何がハラスメントや、あんなもん精神病質(サイコパス)なだけやないか、などと思いながら見ていた。いや、実際そうだ。ピネルが「デリールを欠くマニー」として概念化したのはああいう人たちなんだろうなと改めて思った。
カスハラに相当するような現象は昔から見られたものと思う。もし、現在のカスハラが以前よりも増加していたり、質が悪化しているとするなら、それは現代人の退化によるものだと僕は信じている。人間の質が低下しているのだ。そうだとすると、現代に生きることにますます嫌気がさす思いがする。
そんなこんなで、朝はテレビも見ながら過ごす。せっかくなので外出しようと思い立つ。4時間ほど自由時間が確保できる。でも、行く当てなんてない。とにかく電車に乗ろう。電車に乗ってしまうと選択肢が限られてくる。つまり、大阪方面に向かうか、京都方面に向かうかの二択になる。今日は京都方面に決める。大阪まで出るのはチョイと億劫に感じられたからだ。
京都は河原町に出る。阪急の河原町駅の難点はどの出口にもエスカレーターがないことである。どこかにあるのかもしれないけれど、僕は知らない。適当な出口から外に出る。この時、何気なく前に歩く人たちについて行ってしまって、あやうく店に入っていくところだった。いつの間にか、みんな外に出るものだろうと思い込んでしまっていた。どうもボンヤリしていた。
木屋町通りと河原町通りをあみだくじ状に歩く。特に目的はない。外国人が多いなとは感じた。丸善でも覗こうかと思ったが、まだ開いてなかった。そうか11時になってなかったんだ。京都は開くのが遅い。仕方なく、そのまま歩く。
三条通りに出る。そこから東へ向かう。京阪電鉄の駅がある。そこにブックオフがあるので、入ってみる。
最初にCD売り場を眺める。特に欲しいものはないし、掘り出しものもない。次いで書籍売り場に向かう。何も買いたい本はないけれど、眺めるだけ眺めよう。
ワゴンセールでいいのを見つけた。読む時間が確保できるかどうかも分からないのに飼うことにする。ここで2冊手にする。その後、文庫本の方へ行く。そこでも2冊買ってしまう。計4冊だ。それをレジに持っていく。
レジで計算してもらうと、ずいぶん値が張るので驚く。思わず「高いな」と言ってしまった。店員が不愉快そうに、一冊一冊の値段を挙げていく。これがいくら、これがいくら、とやっていく。いや、そうじゃないねん、と思う。要はワゴンセールのセール品がセール価格になっていないのだ。そのことを言おうと思っても口を挟む余地がない。
本音を言えば、話の通じる奴を出せと言いたいのだけれど、どうも今朝のカスハラの映像が浮かんできて、きっとこういう場面でカスハラが起きるのだなと思い、言いたいことを飲み込んでしまった。
結局、セール品の一冊は通常価格で買うことになった。200円のはずが2000円だった。でも、この本が2000円でも充分に値打ちがあるし、安いものである。低下は9000円ほどする専門書で、新品同様にきれいなのである。だから2000円でも安い買い物をしたことになる。
値段に関してはそれで納得できるけれど、あの店員だけは困ったものだ。この先、ああいう店員が増えていくのだろうな。「なにかおかしなところがありましたか」などと客に訊かず、「うちのなにが間違ってまんねん、おたくが間違えてはるだけでしょ」みたいな態度の店員が増えていくのだろうな。これもまた人間の退化と言えようか。
さて、本を買うと、やっぱりちょっとは紐解きたくなる。かつてならどこかの喫茶店にでも入ってやるところだけれど、今はそういう店がない。まず、禁煙店が多くなった。次に落ち着ける店がなくなった。店そのものはあちこちにあるけれど、入ろうという気持は起きない。それに歩いていると腹も減る。昼飯もまだだ。
結局、コンビニに行く。灰皿の置いてあるコンビニだ。そこでパンと飲み物を買って、タバコを一服する。外国人の団体がそこにいた。吉野家へ行くかサイゼリアへ行くかで議論していた。結果、サイゼリアに決まったようだ。外国人観光客も案外僕らと変わらんかもしれんな。何気なく観察していると、また外国人の一団が集まって来る。なるほど、コンビニが集合場所になっているのか。
その後はどこにも行く気がなく、駅に向かい、帰宅の途につく。4時間ほど自由時間があったはずなのに、3時間足らずで帰ってきた。僕にとって、京都は4時間を過ごすこともできない町になってしまった。2,3時間で充分だ。帰宅後は本を読んで過ごしたのは言うまでもない。本ばかり読んで、ホントしょうがないんだけれど、でも、退化するよりましだ。
(寺戸順司-高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー)