5月21日(水):闘病記―12
今日で断酒13日目だ。昨日からその萌芽が感じられていたのだけれど、今朝は朝勃ちがすごかった。これは女性には理解してもらえない体験だ。
昔、男性の酒飲み友達が「朝勃ちなんてとっくにしない」と言っていたな。僕より少し年上の男性だった。今では僕も当時の彼と同じくらいの年齢に達している。
この男性機能に関しては、まず、身体的な事柄である。酒はもちろん、食習慣によってもこの機能は影響を受ける。年齢もそこに加わる。年齢は仕方がないとしても、断酒すると少しそれが回復する。これは断酒するといつも経験することだ。今回は少し早めにそれが来たという感じだ。
そしてこの機能は心理的な事柄でもある。性に関する事柄というのは、僕の見解では、大部分が心理的なことであり、身体的な部分はむしろ少ない。性は、もちろん恋愛とか異性関係とも関わるが、創造性とも関わる。インポテンツは人間が非創造的になってしまうことである。あまり理解されないかもしれないけれど、これは事実だ。
今日は本をよく読んだ。
梶井基次郎の短編二つ、角田喜久雄の短編三つ。リチャード・マシスン『夜の訪問者』を一気読み。その他、先日来られたクライアントの理解の助けになるかと思い、フェアバーンの『人格の精神分析学』第1部などを読む。
マシスンの同書は、昔買ったものだけれど、この間の整理で見つけたものだ。僕はてっきり処分したものと思い込んでいたので、見つけた時は大喜びだった。それで久しぶりに読もうと思って手をつけたところが、最後まで読み切ってしまった。200ページたらずの本で、2時間もあれば十分読めるものだ。でも、以前もそうして一気に読んでしまったのではなかったかな。とにかく、面白いのだ。
今日読んだ5つの短編の中では、梶井基次郎の「Kの昇天」が一番気に入った。影と格闘するKの姿がいい。
仕事を終える。近所のコンビニの前でタバコを吸う。かつての飲み友達とばったり出会った。普通にお喋りをして別れた。彼も今はあまり酒を飲んでいないらしい。いや、以前からそうだったかもしれないな。彼の話では、彼の行きつけの店、僕も時々訪れる飲み屋さんだったけど、その店が閉店したのだという。だからあの店の常連がみんなバラバラになったということだ。やっぱりそうなるよなと、僕は思った。
後でその店の前を通ってみようと思った。そこから喫茶店に向かう。いつもの所でもいいのだけれど、今日は反対方向へ向かう。すると、バーのマスターとばったり会う。後で来てよと誘われるが、言葉を濁して別れる。やはりいつもの店にしておくべきだったか。
喫茶店で、今日は勉強ではなく、サイト作業の手順を作った。細かな所を忘れてしまったり省いてしまったりするので、そうならないように作業の流れを作る。つまりマニュアルとか操作方法を作成したような感じだ。
喫茶店を出る。うわっ、また飲み友達と出くわしてしまった。面倒なので、僕は気が付かないフリをして通り過ぎる。やはりいつもの喫茶店にしておくべきだった。
買い物をしようと思ってJR方面まで足を延ばす。キャップ書店に寄ろうとしたけれど、今日は休館日なので、無駄足になってしまった。建物全体を休むなんて、古臭い考え方だなと思う。各テナントはそれに合わせなければならないのだから不便だろうな。
飲酒欲求は多少感じられている。もし、空腹が耐えがたいほどになっているのなら、食事はしてもいいと決めている。でも、酒は飲んではいけない。そういうルールだ。バーのマスターに会った時は、後で顔を出そうかなという気持ちに襲われたが、誘惑に負けないで良かった。断酒13日目を無事に終える。
(寺戸順司―高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー)
(付記)
断酒している時に限って飲み友達とばったり出くわしたり、呑みに誘われたりしてしまう。普段はそういうことはないのに。こればかりは不思議だ。まるで天の神様が誘惑を差し向けて、試練を課しているかのようだ。
(平成29年1月)