4月24日:『不思議な物語』を読む(3) 

4月24日(月):『不思議な物語』を読む(3) 

 

 ブルワー・リットン『不思議な物語』第21章から第30章までを読んだので、ここにメモを残す。今回は他にも読むものがあったりして、なかなか捗らなかった。 

 

 21~30章は、ヒロインのリリアン・アシュレーは不在だが、新たな人物が登場する。 

 まず、フェニック医師は、フィリップ・ダーヴァル卿の屋敷に往診に呼ばれる。ダーヴァル卿は国外にて暮らしているが、その屋敷に住む執事が倒れたのだ。執事はダーヴァル卿の幽霊を見たという。 

 このダーヴァル卿も何か科学的な実験に凝っていて、彼の屋敷に出入りできるのはロイド博士だけだったという。ここでもロイド博士つながりの人物が登場するわけだ。 

 ダーヴァル卿は、シリアのアレッポという町を旅していた時に、奇妙な事件に興味を抱き、そのまま研究を続けているという。その事件の関係者はルイ・グレイルという男で、ポインツ夫人はその男を知っているという。彼女の話では、グレイルは相当な放蕩者であったようだ。 

 次に、フェニックの論文を熱心に読んでいた人がいるということで、マーグレイブという若者をフェニックは紹介される。このマーグレイブなる人物がとても奇妙で、紳士的であるかと思えば、一瞬にして野獣のように変貌する。リスを踏み潰し、子供に怪我を負わせるなど、狂暴な一面を見せる。その一方で、彼は独特の魅力で人々を魅了し、心理的に征服する。Lの町の人たちは彼に翻弄され、距離を置こうとする。 

 そんな時に、ポインツ夫人は、リリアンとフェニックの婚約を公表する。秘密にするという約束であったのに。フェニックは事情を伺いにポインツ夫人を訪れるが、リリアンに関する良からぬ噂を知らされる。ホートン夫人の縁者のアシュレー・サムナという男がリリアンに求婚したというのだ。それで婚約の事実を公表することで、既成の事実にしたという次第だ。 

 

 ロイド博士にはそれほど覚えなかったが、グレイルやマーグレイブなど悪魔的な人間が登場してくることによって、物語は不穏な空気に包まれていく。いや、この空気は作品全体に漲っているものなのだが、僕の文章力ではそこを伝えられないのだ。なかなか面白くなってきた。 

 

(寺戸順司―高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー) 

 

 

 

関連記事

PAGE TOP