4月21日(金):いい買い物
今日は休める。休んでもいい。風邪の具合がだいぶん良くなったので、外には出ようと思った。日を浴びることも大切だ。
家を出て、特に行く当てもなく、駅に向かう。そこから電車に乗る。京都側へ行こうか大阪方面に行こうが、自由である。特に理由もなく、京都方面の電車に乗る。河原町駅で下車。その途中で下車してもよかったが、どうしようかと迷っているうちに終点に至っただけである。
平日の朝ということもあって、あまり人も多くはなかった。外国人ばかりである。
ブラブラして、古書店に入る。100円で叩き売りされている本を4冊買う。4冊とも、それほど大きな本ではなかった。3冊同時に着手し、1冊は読み終え、あとの2冊はそれぞれ前半を読み終えた。手を付けていない1冊は、推理小説系の雑誌で、これはまあ、気が向いた時に読もうかいなという程度のものである。
その後、中古CDを数枚買う。ブックオフの500円均一、280円均一のコーナーから選ぶ。6枚買って、2300円程度だった。
結局、それだけである。昼ごはんをどこかで食べようかとも思ったが、どこにも入る気がせず、それならコーヒーでもと思うが、やはり入りたい店がなかった。しばらくブラブラした後、いつものように高槻へ出る。
昼過ぎに高槻に着。電車の中で150ページ程度の薄い本を1冊読み終える。
職場に入ると、買ってきたCDを流す。同じく、買ってきた本を読む。夜までそれをする。
夕方、一度だけ中断した。昼食抜きだったので、さすがに腹が減ったのだ。近所で軽く食事を済ませる。これがもう夕食でもあった。
職場に戻ると、再びCDをかけて、音楽を聴きながら、本を読む。
それが今日ここまでの活動の全部である。
今日読んだ本の1冊は「結婚十五の歓び」というものだ。これが面白い。岩波文庫から出ている。フランスの人が書いたものだけど、作者不詳。14~15世紀頃に書かれたものとされている。
このタイトルは、一読すると結婚の推奨のように見えるのだけど、内容はその正反対である。結婚生活によって、男がどれだけ難儀して、寿命をすり減らしていくかを風刺的に描いている。作者は夫のその姿を簗(やな、魚を捕らえるための罠)にかかった魚に比喩する。そして、簗にかかったことに歓びを感じているから、この不幸は夫の喜びであるという、逆説めいた皮肉を作者は繰り返し披露する。
14~15世紀のフランスの話なので、生活環境や風習は現代の日本とは異なるのだけど、夫婦のやりとりにそんな違いが見られるとは思わない。むしろ、そこはまったく変わっていないという印象さえ受ける。
いつかこの本のことを取り上げたいとも思う。一箇所だけ、思わず笑いがこみ上げてきたところがある。面白いとかおかしいとか、そういう意味ではなくて、僕の中で妙に腑に落ちたからである。
夫婦がいさかいを起こしている。夫は「お前は俺と別れたら他の誰かと結婚するんだろうな」などと妻に言う。すると、妻は「まあ、わたしが結婚して幸せだったと思うのね」ということを言い返す。この妻の一言はするどい。そうそう、この夫が言っていることはそういうことなんだと、僕は妙に納得した。
その他、この本には夫婦のやり取りがいきいきと描かれていて、それが本書の命脈を保ってきた要因だと思う。時代や文化、国籍を超えて、夫婦が経験する本質的な部分が取り上げられているのだと思う。
いやあ、100円でいい買い物をした。
(寺戸順司―高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー)