4月15日(土):『不思議な物語』を読む(2)
リットン『不思議な物語』の第11章から第20章までを読んだので、ここにメモを残す。
前章で病に伏したリリアンを手当てして、アシュレー夫人から多大な感謝を頂いたフェニックであるが、なるほど、こういう展開になるのか。
翌日、アシュレー家を訪問したフェニックは、リリアンの主治医を解雇されたことを知る。ヴィガーズ氏が手をまわして、リリアンの治療はジョーンズ医師が担当することになったのだ。ジョーンズ医師というのは、ロイド博士の弟子で、同様に催眠術や透視などの神秘的治療を行う医師であった。
ジョーンズ医師による治療は、リリアンをどんどん衰弱させていく。フェニックは気が気でない。そして、ポインツ夫人の協力を得て、ジョーンズ医師を解雇し、フェニックは再びリリアンの主治医に返り咲いた。
フェニックの治療により、リリアンの健康は回復してくる。乗馬やダンスなどができるまで回復する。フェニックには一抹の不安があった。それはリリアンの病状でよく分からない点があることだった。
リリアンもアシュレー夫人も、フェニックに信を置くようになり、やがて、フェニックはリリアンと婚約を交わす。
ここでヴィガーズ氏が不穏な動きを見せる。アシュレー夫人は義姉のホートン夫人から訪問の誘いを受けていたのだが、それにヴィガーズ氏が関与しているようである。ホートン夫人は息子のジェームズ卿を失っており、ともに喪に服してほしいといってアシュレー夫人を招待しているのだ。
アシュレー夫人はそれに従わないといけないと感じている。リリアンもそれに同伴することになる。フェニックはしぶしぶその決定に従うことになる。こうして、婚約を交わした二人は、一時的に引き離されることになるわけで、ここにヴィガーズ氏の思惑が働いていることが暗示されているわけである。
その夜、一人で論文を執筆していたフェニックは、他に誰もいないはずの部屋でため息を聴く。とっさにリリアンを思い出す。彼は神経のせいだと思い、そのまま就眠する。
ここまでが第20章までの大雑把な筋である。
リリアンを巡っての奪い合いが展開される部分であるようだ。もっともヴィガーズ氏、ジョーンズ医師コンビの思惑が明確にはなっていないけれど、不穏な動きを示しているようなので、彼らには何らかの計画があるのではないかと思わせる。
そのリリアンにはどこか不思議な、神秘めいたところがあることも描かれている。それが彼女の元々の性質なのか、ジョーンズ医師の治療によってもたらされたものなのかは、今の所、はっきりしない。
ちょっと物語が面白くなってきたと、僕はそう感じ始めている。
(寺戸順司―高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー)