3月4日(日):よからぬ企み
昨日は少々忙しい一日を送ったが、今日は比較的ゆっくりできる。無理のないペースで仕事ができる今日みたいな日が一番好きである。バタバタするのは、僕にとっては、あまりよろしくはない。バタバタすることもないわけではないが、そういう時は何かが疎かになっていて、時には疎かになっていることに気づかないまま通過してしまうこともある。それが後で問題になったりするのだ。だから、ある程度余裕がないと、僕の場合、上手くいかないのだ。
Yさんと会う時は大抵高槻である。周辺を一緒に歩いている時、僕は意外とこの辺りのことを知らないということに気づいた。高槻で仕事をしているのに、高槻のことを全然知らないのである。確かに、朝から晩まで職場に居て、一歩も外に出ないという日も多い。出たとしても、極くわずかな地域、限られた周辺地域しか歩かない。少し離れると、そこに何があるのかまったく未知である。
昨日は仕事を終えると、いつものように喫茶店で書き物をしていた。それから一時間半ほど、普段縁のない道を歩いてみようと思い立つ。JR側は特に不案内である。昨日はJRの北側、並びに西方面に足を伸ばしてみた。JTの研究所のようなものがある。大きな施設だ。初めて知ったね。個人事業の小さな会社や商店がけっこうあったように感じたが、概ね住宅街であるようだ。まったく知らなかった。
やはり高槻で仕事をしている以上、高槻の地理くらいは頭に入れておいた方がいいだろうと思う。それで今後もいろいろ歩いてみようと思う。ただし、地理を頭に入れるというのは、建前である。本音はYさんとイチャつく場所を物色しているだけなのである。
イチャつく場所の条件として、夜は人があまり通らないこと、他人の土地でないこと、その中で更に人目を避ける場所があるということである。さらに、比較的駅にもYさんの家にも近い所がベストである。
そういう場所を見つけるとする。二人で歩いていて、それとなくその場所に近づいておく。さりげなく、「歩いて疲れたから、少し休もうか」などと誘いかける。「ちょうど、いい所に公園があるわ」などと白々しく言う。「ここのベンチに座ろう」と、いかにもその場で発見したように装っているが、本当は事前に調べておいて、このベンチが死角になることを熟知している。そして二人並んでベンチに座り、イチャつき開始である。うーむ、なんて良からぬことを考えているのだろう、僕ってものは。妄想って、こうして膨らんでいくのだろうなあ。
因みに、昨夜の成果であるが、条件にぴったり合う場所は皆無であった。誰か詳しい人に尋ねたいくらいだ。候補地くらいはあったが、そこはまだまだ調査が必要だ。でも、めげずに今日も良からぬ企みのために、あちらこちらを探し回る予定である。
しかし、まあ、仕事の方もこれだけ情熱をかけて臨めばいいのだが、うーむ、我ながら情けないね。でも、人間関係には訣別がつきものである。Yさんとは末永く付き合いたいとは思うのであるが、いつか別れがくるものである。どちらかが先に亡くなって、死別することもある。だから、「惚れる時にはとことん惚れぬいておく、そうでないといつか後悔する」という人生哲学を僕は持っている。もちろん、根拠のはっきりしない哲学ではあるが。
(寺戸順司-高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー)