3月30日(木):VIVAマカロニ~『さすらいの盗っ人野郎サンタナ』
10万ドル強盗の容疑で保安官たちに追い詰められていたサンタナと相棒のマルコス。だが金は仲間であったバートン兄弟が持っている。彼らは賭けをして、負けたマルコスが保安官たちを引き止め、サンタナはバートン兄弟のいる町へ向かう。
逮捕されたマルコスは保安官補スミスに計画を話し、揃って町へ向かう。町でサンタナと合流したマルコスたち。さっそくバートンのいるバーへ足を運ぶが、金は兄弟のフレッドが持っているという。
彼らはフレッドに会うために旅をする。途中、邪魔なスミスを処分し、謎の女マリアが同行するようになる。三人旅が続く中、保安官たちも彼らを追跡している。
その頃、10万ドルの現金を所持しているフレッドは駅馬車の中。停車場に着くや他の乗客もろともカービー一族の人質になってしまう。父リチャードと4人の息子たちのカービー一族はどこからか10万ドルの現金を持った男が来る情報を得ていたのだ。
旅を続けるサンタナたちは、金を奪ったカービー一家と遭遇し、彼らもまた命を狙われる。
物語はまだまだ続くが、ひとまずこの辺で。
サンタナ演じるのはジャンニ・ガルコ。版権の関係でサルタナ名を使用できなかったらしく、苦肉の策でサンタナになったそうだ。
マルコス演じるのはウイリアム・ボガード。ギャンブル好きでイカサマ師だが、サンタナの兄貴分のような雰囲気があって好感が持てる。
マリアを演じたのはマリア・シルヴァ。大胆で男勝りな役どころだ。キリっとした顔立ちの美人さんだ。
バートン兄弟を演じるのはラフ・バルダサーレ。一人で兄弟二人を演じている。しかも一作品の中で二回も殺されるという豪華な役だ。カーリー一家の人質となり、怯え、困惑するフレッドの方が適役といった感じだ。
保安官を演じるのは、マカロニ保安官俳優ルイス・インドゥーニ。どういうわけか保安官役ばかりする人だ。保安官のイメージに合うのだろう。
その保安官補スミスを演じるのは太っちょのクリス・ヒュエルタ。10万ドルの誘惑に負けてマルコスに同行して、最後はやられてしまうという、「人の好さを感じさせる小悪党」な感じがピッタリといったところだ。
その他、カービー一家の息子の一人アダムをチャーリー・ブラヴォーが演じている。この人もいくつものマカロニ作品でお見かけする俳優さんだ。
さて、本作は10万ドルを巡って物語が展開する。最初はフレッドが所持していたのだが、カービー一家に奪われる。その後、マルコスの手に入るが、マリアに独り占めされ、挙句はあぶく銭で終わってしまうという顛末だ。
僕の好きなシーンは、ルーレットの台(数字の上に賭け金を置く台だ)にダイナマイトを置く場面だ。本作では二回、そのシーンが見られる。なかなかカッコいい登場の仕方だと思うと同時に、よくこういうアイデアを思いつくなと感心する。
ジャンニ・ガルコは相変わらずイケメンであるが、彼のマカロニ作品では本作が一番いいと、個人的には思っている。
ウイリアム・ボガードもまたタイプの違ったカッコよさがある。ラフ・バルダサーレもチャーリー・ブラヴォーも、みんないい顔をしていると思う。60~70年代ころの映画俳優さんはみんな「いい顔」をしているように僕には見える。これはカッコいいとか、ハンサムとかいった意味ではなく、雰囲気として伝わってくるものだ。
当然、マリア・シルヴァもいい。本作では、父の仇討を目論みつつ、悪女ぶりも発揮するのだが、愛嬌も感じられ、なかなか魅力的だ。
本作は1970年公開作品。日本では劇場未公開で、テレビ放映もされなかったという。決して悪い内容ではないのに、日本ではウケないと評価されたのか。埋もれた名作の一つだ。
(寺戸順司―高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー)