3月3日:トリキにて

3月3日(土):トリキにて

 ここ数日は忙しい日が続いた。

 今日は夜は少し早く帰らなければならなかった。用事があって、家に帰らないといけなかった。19時に退室しようと決めていたけど、少し遅れた。

 階段の途中で見知らぬ人たちとすれ違った。僕はてっきり4階のお客さんだと思い込んでいた。僕の方では来客の予定がなかったからだ。でも、もしかしたら、僕のところを訪れようとしていたのかもしれない。

 そうだとすれば悪いことをした気にもなるが、アポなしで行っても会ってもらえるなどと信じられても困るので、彼らには無駄足を踏んでもらって良かったようにも思う。彼らはあまり気にしないかもしれないけど、アポイントメントなしで、いきなりやって来る人というのは、こちらとしてはけっこう不気味である。

 まあ、どうでもよいことだ。彼らがウチに用のある人であろうとなかろうと、単にすれ違っただけの人ことで気を回す必要もない。

 今晩、いつもの飲み仲間で送別会をやっている。仲間の一人が転勤することになっているからだ。僕は不参加だ。参加してもいいのだけど、なんだか気分が乗らない。

 まあ、その人と別れることになるが、仕方がない。生きていればそういうことも経験するものだ。出会い、仲良くなり、いつか別れる。別れもまた受容しなければならない人生経験なのだと思う。

 書店に予約していた本が入荷したそうだ。連絡があった。意外と早かったな。てっきり来週になるだろうと思い込んでいたのだが。近いうちに時間を作って、買いにいかないといかんな。また一つ用事が増えたが、まあ、これは自分で増やしたようなものだ。

 さて、帰宅して用事を済ませると、独りで食事に出た。無性に焼き鳥の気分だった。地元のお店に行く。名前を出してもいいのいかな、まあ、「鳥貴族」さんだ。

 懐かしいな。カマンベールコロッケか。友達だったYさんがこれを好きだったな。ついつい注文してしまう。彼女もどうしてるかな。元気にしてるかな。

 トリキの焼き鳥はとかくボリュームがある。値段的には普通並みなんだけど、一品一品が大きい。何品か食べると、もうあとは何も要らないくらいだ。半分は満腹感で、後の半分は飽きがくるという感じだ。

 失礼な言い方だけど、けっこう味がザツである。鳥もひたすら太らされた鳥だろう。人間で言うなら、要するに、デブだ。肝も心臓もあんなに肥大して、メタボもいいところだ。運動なんか一度もさせてもらえなかった鳥たちかもしれない。炭火で焼いても、脂っぽさがいっぱいだ。若い人にはいいかもしれなけど、僕のような中年にはチョイとばかりキツイ。

 不思議と兄のことも思い出した。兄も高級なフランス料理店なんか出さずに、焼き鳥屋でもやってくれていたら、僕もチョイチョイ顔を出したのに。

 トリキを後にする。思っていたほど食べなかったし、飲まなかった。そして、無性に気力が湧いてきた。バリバリ仕事をこなしたいという気持ちになっている。

(寺戸順司―高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー)

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