3月24日:メディアとは関わらずに

3月24日(木):メディアとは関わらずに

 

 向こうはどう思っておるか知らんが、僕は1階のソバ屋とは仲が悪い。どうも好かんのだ。その1階のソバ屋に今日テレビの取材が入った。

 ソバ屋の大将が道端で知人をつかまえてはペチャクチャお喋りをするのだが、3階まで筒抜けである。だからテレビの取材が入るということは僕も前々から知っていた。朝の「よ~いどん」だ。人間国宝さんではなく、今日のおすすめさんのコーナーなのだろう。

 ちなみに、職場の前の通りは、片方は駅の建物で、反対側はビルが並んでいる。こういう条件なので声がよく反響するのだろう。だから路上での会話がけっこう聞こえるのである。換気のために窓を開けていると尚更である。ソバ屋の大将の声は窓を閉めていても聞こえる。しかも何を話しているかまでハッキリ聞き取れる。

 僕も別に盗み聞きするつもりはないのだ。自然と声がこちらまで届いてしまうのだ。それで聞く気がなくとも聞かされるのである。路上で話している人も、3階に聞かれていると思うと気まずいと思うだろうけれど、それと同じくらい3階の人間も気まずい思いをしているのである。

 それはさておき、今朝もソバ屋の大将が路上でお喋りをしていて、その撮影が今日であることを僕も知った。ああ、いやだ、勘弁してくれよ。今日はお客さんが来る。1階にテレビなんぞが来て、野次馬でも集まっていたらかなんなあ、などと思う。人が集まっていると入りにくいと感じてしまうクライアントもいるだろうからである。

 しかし、上手く時間がずれてくれた。テレビが来たのは3時半頃だった。前のクライアントと次のクライアントの間の時間だった。それに、タレントさんがいるわけでもないので人だかりができることもなかった。済んでくれてやれやれだけれど、こっちはこっちで気を遣うので勘弁してほしいところである。まったく、テレビの取材なんて断れよ。

 特に飲食店なんだけれど、テレビなんかで取り上げられると、その後の明暗がけっこうはっきりつくという印象を僕は受けている。

 テレビに出て、知名度が上がり、一時的にお客さんが殺到することがある。しかし、こういうお客さんは気まぐれなもので、テレビで他の店が取り上げられると容易にそっちに流れていく。要するに、リピーターになってくれないわけだ。この場合、メディアの力に動かされて人が集まっただけであって、その店が自力でお客さんを獲得したわけではないのだ。ここを勘違いするとひどい目に遭うと僕は信じている。また、急激にお客さんが増えて、対応が追いつかなくて不評を招いてしまうということもあるかもしれない。

 僕もかつては4件ほどテレビの依頼を受けたことがある。その内の一件はラジオ番組だったな。あれを受けていれば有名になっていたかもしれないけれど、有名人になりたいとも思わない。メディアなどと関わらず、分相応の仕事をするのが僕の性に合っている。

 

(寺戸順司―高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー)

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